60話 ページ12
「…あれ?いつもなら開いてる時間なのに」
夕日が景色を橙に染める頃。暖簾の掛かっていない雷雷軒を目にして円堂は思わずそうこぼした。響木と話したいことがあり営業時間に合わせて来たのだが、店は何故か開いておらず中の明かりも灯っていない。
「円堂!」
「!あ、」
「どうした?」
首を傾げ出入口の前に佇んでいた円堂に声がかかる。声の主は目当ての響木で、不思議そうに用件を尋ねられると円堂は少し考えた後口を開いた。
「あの、響木監督…。…飛鷹は、監督が選んだんですよね?」
円堂が響木と話したいこと、それは飛鷹についてだった。チームに溶け込めずプレーもぎこちない飛鷹を少しでも良い方向に向かわせることができたら、と積極的に話しかけたり練習に誘っていた円堂だが、なかなか思うようにいかない。昨日もパス練習の途中で無理矢理走り込みに切り替えられてしまったし、正直お手上げ状態なのだ。
「俺、もっと仲良くなりたいんです。…でも、なんだか上手くいかなくって…」
どうすればいいんでしょうか、と眉尻を下げ浮かない顔をする円堂に何も返さず扉を解錠し店内へと入っていった響木。その大きな背中を見つめながら円堂は響木の言葉を待つ。
「お前は…今のあいつ、これからのあいつとサッカーをしていくんだろ」
「……。…!」
「だったら、これから知っていけばいい。ゆっくりとな」
その言葉の意味を理解すると、円堂の暗かった表情は一転して明るくなった。
「…すみませんキャプテン。昔のことは、勘弁してください」
あの日、飛鷹にそう言われてから心の奥でずっと迷っていた。彼を知るためだからと、そこに踏み込んでいいのか否か。けれどそうだ、仲良くなるのに過去なんて最初から関係なかったのだ。俺たちはこれから、未来で共にサッカーをするのだから。
「分かりました、ありがとうございます!!」
円堂の心情を表したかのようにぱっと灯った室内の明かり。響木に食べていくかと言われるも、皆が待っているからまた今度ご馳走になると見送った円堂は、行きよりも遥かに軽い足取りで駆けていき雷雷軒を後にしたのだった。
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bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからまた読み直そうと思います！ご自身のペースで更新してくださると嬉しいです(◍•ᴗ•◍) (12月28日 21時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - とても面白かっです！！続きが気になりすぎて夜しか眠れません。更新よろしくお願いします (12月15日 18時) (レス) id: 51c9a307dd (このIDを非表示/違反報告)
サカナ(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます！思わず一気見しちゃいました笑更新楽しみにしてます！ (10月29日 22時) (レス) @page29 id: ff0b9e3173 (このIDを非表示/違反報告)
テオ - とても面白かったです！続きが気になります！！また書いてくれるのを楽しみにまっています！ (8月31日 9時) (レス) @page29 id: 715df6a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - またまた戻って来てしまいました……！イナズマイレブン熱はいつになっても冷めないようです笑何度読んでも面白くて最高です！ (8月21日 19時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：不二市
| 作成日時：2019年1月7日 3時
