58話 ページ10
「良いぞ!ナイスシュートだ!!」
「どうです、豪炎寺さん!」
「やるじゃないか」
デザートライオンを敗りアジア予選決勝へと駒を進めたイナズマジャパン。過去を断ち切り覚醒した虎丸によりチームの士気も上がり、久遠が監督する中各々が練習に励んでいた。
「虎丸君、絶好調ね」
「まさに眠れる虎が目覚めたって感じです!」
「……彼も、いつかは目覚めるのかな」
積極的にゴールを狙うようになった虎丸。そんな彼を眺める秋と春奈のそばでぽつりとこぼした冬花の視線の先は、ぎこちない様子でパス練習をする飛鷹だった。
上手く蹴り返すことができずに立向居の頭上を越え飛んでいったボールは奥で土方とパス練習をしていた綱海の頭に命中する。ゴーグルがある分かなり痛そうだ。
「いきますよー!」
「…ふっ!あ、……」
今度こそ、と振りかぶった足は空を切り、ボールはそのまま飛鷹の足の下を抜け転がっていった。
失敗するたびに自分の未熟さを痛感すると同時に、ひどく虚しくなる。彼らに追い付くためには、もっと練習しなければならないことなんて頭では理解している。けれどまた失敗するのが怖くて、それを見られるのが恥ずかしくて
「と、飛鷹さん?」
「…ちょっと、走り込みだ」
結局、逃げてしまうのだ。
「あいつ、また一人で…」
円堂がフィールドの周りを走る飛鷹に気付き目で追っていた、そのときだった。数人の慌てふためく声が耳に飛び込んできて円堂は反射的にそちらに顔を向ける。
「っ大丈夫か一青!?」
『大丈夫だよキャプテン、ちょっとふらっとしただけだから…』
「いや完全に倒れてるぞ!?」
地面に力なく横たわる水城に円堂が慌ててゴールから駆け付ける。そばにしゃがみ込んで安否を問うと、白の隙間から覗く紺碧がゆるゆると細まった。パス練習の相手であった吹雪が恐る恐る手を差し出すと、その手を取ってゆっくりと上体を起こす。
「水城、少し休んでいろ」
『…はい…』
頭を押さえる水城の顔色は、白を通り越して蒼白であった。久遠が言い渡すと渋々といった様子で頷いた水城に豪炎寺が肩を貸す。水城が無事ベンチに座るのを見届けると、各々は再び練習を再開したのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1671人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「イナズマイレブン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
bizyu(プロフ) - とても面白くて一気読みしてしまいました！これからまた読み直そうと思います！ご自身のペースで更新してくださると嬉しいです(◍•ᴗ•◍) (12月28日 21時) (
レス) id: 529a911b17 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - とても面白かっです！！続きが気になりすぎて夜しか眠れません。更新よろしくお願いします (12月15日 18時) (レス) id: 51c9a307dd (このIDを非表示/違反報告)
サカナ(プロフ) - 素敵な作品をありがとうございます！思わず一気見しちゃいました笑更新楽しみにしてます！ (10月29日 22時) (レス) @page29 id: ff0b9e3173 (このIDを非表示/違反報告)
テオ - とても面白かったです！続きが気になります！！また書いてくれるのを楽しみにまっています！ (8月31日 9時) (レス) @page29 id: 715df6a9c3 (このIDを非表示/違反報告)
チョコドーナツ(プロフ) - またまた戻って来てしまいました……！イナズマイレブン熱はいつになっても冷めないようです笑何度読んでも面白くて最高です！ (8月21日 19時) (レス) id: 915577a7d1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：不二市
| 作成日時：2019年1月7日 3時
