【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス VII (ページ48)

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48話ページ48

「これは…」

円堂が異変に気付いたのは水城がザックからマジディへのボールをカットした、その直後だった。

「緑川だけじゃない…皆動きが鈍くなってる…!」

軽い身のこなしで駆け上がっていた水城も、味方の気配がいつもより遠いことに気付き後ろを肩越しに振り返る。一番近い吹雪と基山でさえ距離があり、これでは連携をとるのも難しい。

「後半も始まったばかりなのに、どうしたんだ…!?」

『ブレイヴ、エンブレム!』

「…あれ…?」

味方の様子は気がかりだがそればかりに気を取られている場合ではない。荒々しいスライディングを跳んで躱(かわ)し、着地と同時に地面に手をついて必殺技を発動させ流れるように突破する水城。謎の違和感を覚えた円堂が思わずこぼした呟きは誰にも拾われず、湧き上がる観客の声に掻き消された。

「皆!狩りの時間だ!!!」

アクアトルネード対ストームライダー。拮抗したもののその勝負を制したのは後者で、ナセルがボールを近くのビヨンに渡し、受け取った彼は獣の如く吼えると前線に上がっていく。

「オアシスの水の一滴にも満たないな」

すれ違いざまに言われた言葉に水城は目を見開く。頬を伝う汗が、妙に気持ち悪かった。

「っくそ、速い!」

鬼道のマークを容易く振り切ったビヨン。体力の消耗が激しい荒々しいプレーをしていながらスタミナは全く落ちている様子がない。ザックにボールが渡ると、彼は立ち塞がった基山を強引に突破した。

「させるかあっ!!」

そしてボールは壁山の頭上を越えマジディのもとへ。空中からそのままヘディングシュートを狙う彼に綱海が対抗する。

「ぶっ飛べええ!!!」

しかし蓄積した疲労からか思うように力が出せず、小柄な体躯からは想像できない力でボールと共にゴールに押し込まれた綱海。ついに起き上がれなくなってしまった彼を慌てて助け起こす円堂の前に、ビヨンが太陽を背に悠然と佇む。

「ここからが俺たちのサッカーの始まりだ」

灼熱の太陽と砂漠のフィールドに育てられ、鍛え上げられた身体と無限の体力が最大の強みだと言う彼らの目的。それはイナズマジャパンの体力を削ぐことだった。前半のラフプレーは、言わばそのために打たれた布石。

加えて偶然か否か、本日の気温は高く日射量も多い。増える相手の点数、減る味方の戦力。雲行きが怪しいのは一目瞭然だった。

「お前たちは砂漠に迷い込んだ旅人も同然。あとは息の根が止まるのを待つだけだ」

陽炎が、揺れる。