【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス VII (ページ44)

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44話ページ44

「…よし、いくぞ!」

スタジアムを見上げる仲間たちに、溌剌とした様子でそう声をかけたのはキャプテンである円堂。晴天にも恵まれた本日は、カタール代表デザートライオンとの対戦日である。

この数日間、基礎体力と身体能力の強化に力を注いできた彼ら。それが今回の対戦相手にどこまで通用するのかと、緊張した面持ちで関係者専用入口の前に集っていた。

「虎丸くーん!」

「…あ!?乃々美姉ちゃん!?」

そこに緑のクーラーボックスを抱えた女性がやってくる。虎丸の名前を呼び大きく左手を振った彼女、梨本乃々美は虎ノ屋の近くにある弁当屋の娘で、数日前に手伝いを申し出た円堂たちとは既知の仲であった。

「何しに来たんだよ…!?」

「今日大事な試合なんでしょ?はい皆の分!お弁当作ってきたのよ!」

「まじっスか～!?」

「誰あれ?」「虎丸君のご近所さんよ」木暮と秋の会話を聞いていた壁山がお弁当と聞いた瞬間に目を輝かせ歓喜の声を上げる。実際にクーラーボックスに詰められた弁当箱を見ると彼はいっそう目を輝かせた。

「これ食べて必ず勝ってね、皆!」

「「「「はいっ!!」」」」

乃々美からの思わぬサプライズに緊張が解けたイナズマジャパン。笑みを浮かべ手を振る乃々美に見送られながらスタジアムへと歩を進めた。

「連れてきてくださって、ありがとうございます」

フィールド上。両チームのスターティングメンバーが向かい合う中円堂とビヨンが握手を交わす。その手が離れると虎丸の母、宇都宮たえはフィールドから視線を外し、隣に座る響木に頭を下げた。

「今日はお店が定休日とお聞きしたのでね」

「…でも、大丈夫なんでしょうか…。あの子練習も満足にできていないのに…」

用意された合宿所にも泊まらず、練習を途中で抜けてまで家業を優先する息子に母親である彼女は懸念を抱いていた。こんなに大勢の観客に囲まれてプレーをする我が子の姿が想像できず、ただ不安げに眉を顰(ひそ)める。

「…今日の試合、彼が鍵になるかもしれません」

響木はそう言いフィールドの外に立つ11を背負った彼の背中を見つめると、しばらくしてサングラスの奥で目を細めた。