32話 ページ32
「正義の、鉄拳!!!」
力強く足を踏み込み勢いよく右手を前に突き出す。出現した黄金の拳は心なしか大きく、拮抗した勝負を今度は円堂が制したのだった。
「俺に乗れねえ波はねえ!!!」
弾かれたボールを取った綱海はそう叫び再び荒波を出現させる。先程よりも高く跳んで蹴り込むと、暴風を
「グレートバリアリーフ!!」
「海は…」
水の壁を破ろうと強く回転し続けるシュート。今度は止まることなく、回転に合わせて水飛沫が散る。
「俺のもんだああああああっっ!!!!」
その叫びと同時にシュートの勢いが増し、ついに水の壁に穴が空いた。その勢いは止まることなく、愕然とするジーンの脇をすり抜けてゴールネットに突き刺さったのだった。
「よっしゃあああっ!!」
背中が汚れることも気にせず芝生に倒れ込み全身で喜びを表す綱海。頭側から覗き込み両手を差し出した水城と、喜色満面でハイタッチを交わした。
「久遠監督!」
湧き上がるベンチ陣の中、鬼道が柱に掴まりながら変わらず後ろ手を組む久遠を呼ぶ。久遠は振り返らないが、制止の声もないので鬼道はそのまま言葉を続けた。
「俺たちがオーストラリアと互角に戦えているのは、監督の采配のおかげです!」
虎丸を最高のタイミングで投入したこと、綱海の必殺技を見越していたこと。それはどちらも、並大抵の監督ではできないことだ。
「貴方は、チームを駄目にするような監督じゃない!桜咲木中で…何があったんですか!!」
「…お前が知る必要はない」
「っ監督!!」
あくまでも平静な態度で突っ
「俺から説明しよう」
そうして響木の口から語られる久遠の過去。10年前、フットボールフロンティア地区予選の優勝候補であった桜咲木中は決勝前日に当時の帝国学園の部員と喧嘩し、怪我をさせてしまった。
その事件が公になればサッカー部は無期限停止となり、部員はサッカーができなくなる。だから久遠は自分が問題を起こしたことにして決勝を棄権し、そのまま指導者資格は停止させられたらしい。
「あれから10年。ようやく資格停止処分が解け、俺は監督就任を要請した。何故なら久遠のサッカーへの情熱は衰えず、研究を続けていた。彼の素晴らしい指導力こそ、この代表チームには必要だと思ったからだ」
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作者名：不二市
| 作成日時：2018年7月6日 15時
