24話 ページ24
「秋、あの連中は?」
「飛鷹君に話があるって…」
「なんだって…!?」
飛鷹に大人しく着いていった彼らに困惑しながら捨て置かれた箒を拾い上げた秋に、円堂が窓から身を乗り出して尋ねる。こちらを見上げて言われたその言葉に、3人は驚き円堂の部屋を飛び出した。
「監督!飛鷹が…」
「私が外出許可を出した。飛鷹はすぐに帰ってくる」
活字から目を離さずにそう言われ思わず呆気に取られる。そして「お前たちは戻れ。合宿所から出る許可は出していない」と続けられ、すごすごと部屋に戻っていくしかなかった。
『あ、そうそう鬼道君』
「なんだ?」
部屋に一歩踏み入れたところで思い出したように鬼道を呼び止めた水城。鬼道が足を止め振り返ると口を開く。
『練習は、何もグラウンドでしかできないわけじゃないよ』
「…?ああ、覚えておこう」
頑張ろうね。そう言い微笑んで水城は自室に顔を引っ込めたので、鬼道も自分の部屋に入って扉を閉めた。そして考える。
鬼道が今までの短い期間中に見てきた飛鷹は、どれもサッカー初心者と見紛うばかりのプレーをしていた。何故代表に選ばれたのか?落選してしまった染岡や闇野よりも優れた部分があるのか?久遠は、このチームをどうしたいのだ?
どれだけ考えても謎は解けるどころか深まるばかりで、それどころか気分も鬱々としてしまう。これではいけない、と鬼道は再び部屋を出て、意見を聞くべく豪炎寺の部屋を訪ねた。
「俺には久遠監督の考えていることが分からない…。それに呪われた監督という噂、桜咲木中を事件に巻き込んだという過去…そして今回のこと…」
「気持ちは分かるぞ鬼道。…だが、俺は監督に従うつもりだ」
窓の外を眺めていた鬼道は、豪炎寺の言葉に驚き彼の表情を伺う。いつもと変わらない、落ち着いた様子だった。
「あいつだ。…円堂が久遠監督を信じている限り、俺も信じる」
豪炎寺と目が合うのが先だったか、何かが壁にぶつかる音が聞こえるのが先だったか。その音の方向を見て豪炎寺は口角を上げる。
「我慢できなくなって、とうとう部屋の中で始めたか」
音を辿ると、その正体はやはり円堂の蹴ったボールが壁に当たる音だった。豪炎寺は呆れながらもどこか楽しそうで、円堂の壁打ちに飛び入りで参加しにいった。
『練習は、何もグラウンドでしかできないわけじゃないよ』
「……そういうことか」
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作者名：不二市
| 作成日時：2018年7月6日 15時
