151話 ページ6
私は、なんのためにこのフィールドに立っているのか。
水城は投げ寄越されたボールを足の下に置きながら、ゴール前に立つデザームを見てふと考えた。
エイリア学園を倒すため。そのためにスカウトされ、このイナズマキャラバンに参加した。
驚くことに参加してからまだ1か月も経っていないが、そんな短期間だとは思えないほどに濃い期間だ。自分以外にも仲間は増え、ときには減ってしまうことだってあった。強くて、面白くて、一緒にいると楽しくて、頼れるかけがえのない仲間。誰にだって代わりなんていない。
そんな仲間にも、大なり小なり抱えている問題があった。今水城がフィールドに立っている意味を考えたのは、仲間である吹雪がそれに悩まされているからだった。
シュートを決めなければそこにいる価値は、意味はないのだろうか。そんなことはないと水城は思う。プレーで成功しても、失敗しても、どんなときでも声をかけてくれるのなら、それだけでフィールドにいる価値も意味もあると思う。
だが、吹雪はそれでは足りなかった。目立ちたいとか、褒められたいとかそういうのではなくて、本当にシュートを決めなければ自分に価値はないと思っていた。
悲しくて、寂しいことだ。吹雪には、
私は、なんのためにこのフィールドに立っているのか。
水城自身、まだその答えは分からない。しかし今この試合だけに限れば、答えはある。
イプシロン改を倒すため?
いや、惜しい。サッカーのことはサッカーでしか解決できないように、吹雪のことは吹雪でしか解決できない。答えは、
イプシロン改を倒して、次に繋げて吹雪を安心させるためだ!!
イプシロン改を倒さなければ道は開けず、吹雪の問題を解決するための機会を設けることすらできない。吹雪を救うことが、できなくなる。
呼吸が上手くできない、足が震える。だが水城はその一歩を強く踏み出し、勢いよく走りだした。
『真…アクア、トルネ────ドッッ!!!!』
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作者名：不二市
| 作成日時：2018年4月23日 23時
