178話 ページ33
「監督、今なんて…」
「キーパーを辞めろと言ったのよ」
「そんな、急にそんなこと言われても…!」
絶句した円堂が我に返ってもう一度尋ねるも、やはり聞き間違いではなかった。瞳子はちらりと鬼道を見る。
「あたしは反対です監督!このチームのキーパーは円堂しかいません!」
「だよな、無茶苦茶だろ…」
「どういうつもりでそんなことを言うんですか…!」
「俺も嫌っスー!」
今まで円堂に背中を任せていた仲間たちが抗議するもそれには返さず「勝つために、キーパーを辞めてほしいの」と続ける。「勝つため…?」円堂が
「俺は監督に賛成だ」
「鬼道!?」
「俺たちは地上最強のサッカーチームにならなければならない。お前が必殺シュートのために前へ出ることで相手に得点のチャンスを与えてしまうのなら、それは大きな弱点だ」
腕を組み言う鬼道の脳裏には先程の試合。円堂がシュートを打つために前へ出たのに、シュートを打つ前にボールを奪われゴールががら空きになってしまったあの状況。
「弱点は克服しなければならない。そこで初めて俺たちは、完璧な地上最強のサッカーチームを名乗ることができる」
「それで、円堂にどうしろって…!」
完璧という言葉に吹雪が少し反応した。それはつまりどういうことなんだ、と結論を言わない鬼道にやきもきした塔子が尋ねる。
「変わってもらうんだよ、円堂に」
「え…?」
「円堂、お前はリベロになるんだ」
「リベロ?」
鬼道が円堂にそう言った。瞳子もそれに同調したので、どうやら2人は同じ考えだったようだ。エイリア学園に勝つためにはもっと大胆に変わらなくてはいけないのだと。そしてその鍵になるのが円堂だと言う。
『変わろうと思えば変われそうだけどね、キャプテン』
「一青…?」
『さっきの頭から出てきた手。あれ、キーパー技じゃないでしょう?』
「ああ。あの技をマスターすれば、お前は攻守に優れたリベロになれる」
水城が先程の試合の最後を思い出しながら言う。それに頷いた鬼道。円堂は「リベロ…」と呟いた。
「リベロって、なんだ?」
「リベロとは自由という意味のイタリア語で、ディフェンダーとして動きながらも前に出て攻撃もするプレーヤーのことですよ」
「へえー…」
綱海が誰に向けてでもなく尋ねると目金が答える。その会話を聞きながらも円堂は思案し、そして決めた。
「俺、やるよ。勝つために、強くなるために変わる!リベロになる!!」
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作者名：不二市
| 作成日時：2018年4月23日 23時
