【イナズマイレブン】紺碧のイノセンス IV (ページ35)

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180話ページ35

「…一青ちゃん」

『どうしたの?』

「行きだけでいい…ちょっと、着いてきてほしいんだ」

キャラバンから降りたところで水城は吹雪にそう頼まれる。円堂に後で行くと伝えて、吹雪と水城は全員とは逆方向に歩きだし稲妻総合病院へと向かった。

「ごめんね、ありがとう一青ちゃん。ここまで着いてきてくれて」

『気にしないで吹雪君。染岡君とたくさん話しておいでよ。じゃあ、またキャプテンの家でね』

「うん、また」

吹雪が院内に入っていくのを見届けた水城。ついでに散策しよう、と円堂の家には向かわず、あてもなく歩き始めた。

『…どこだろうここ』

景色をただ眺めながら歩いていたのがいけなかった。稲妻総合病院に着いた頃はまだ青空だったのに、今は景色が橙色に染まっている。

稲妻町のシンボルであるイナズママークが付いた鉄塔が見えない代わりに、切り立った崖に囲まれた学校がここから見える。海に面しているうえに大きな船が何隻も泊まっているので多分海賊専用の学校だ(適当)。とりあえず現在地を確認しなければ、と案内掲示板を探す水城。

『あ、あった。えっ稲妻町遠いな…』

随分と歩いたものだ、と変に感心した水城。『キャプテンの家に着く頃には真っ暗だろうなー』と肩に鞄を掛け直したそのとき、てん、とすぐそこで音がした。

「おれおまえしってるぞ!うちゅうじんとたたかってるらいもんちゅうのみずきだろ!!」

それはコンクリートの地面にサッカーボールが落ちた音。その持ち主はまだ幼稚園くらいの子どもで、水城は指を差されそう言われる。

『うん、そうだよ。試合、観てくれてるんだね』

「おう!おれ、みずきのプレーすきだぜ!おんななのにすげえしかっけえから!!」

『わあ、ありがとう!嬉しいなあ』

少年の目線に合わせてしゃがみ込み、ボールを渡すとそのまま会話を交わす。こんなに小さな子どもにも自分たちの存在が知られていること、そして好きだと言ってくれたことに水城は照れくさそうに笑った。

『蓮助君、時間大丈夫?お母さん心配しない?』

「あっもうそろそろかえらないとおこられる…。ばいばいみずき!がんばってうちゅうじんたおしてくれよ!!」

『ありがとう、頑張るよ』

夕日が半分見えなくなったところで少年と別れた水城。水城と話している間終始目を輝かせ頬を紅潮させていた少年。小さなファンの存在に勇気付られた水城は、早足ながらも上機嫌で円堂宅に向かったのだった。