147話 ページ2
陽花戸中を去るときに笑顔で言った「大丈夫」は、大丈夫ではなかった。
「吹雪だあ──っ!!吹雪がドリブルで攻め上がっていく!!」
「吹雪君…。……それでも、私は貴方を試合に使うつもりよ」
病院で瞳子が眠る吹雪に告げた言葉が脳裏をよぎった。夏未が瞳子を見上げるも反応はない。ただ、険しい表情で吹雪を見つめていた。
雷門イレブンは、ジェネシス戦以降戦い方を改めた。吹雪の事情を理解はしたが、それを納得いく形で解決できるのは本人のみ。だからそれができるまでフォローして付き合っていくと決めた。それが、仲間だから。
「エターナルブリザード…!!うおおおおらああっ!!」
皆が求めているのはアツヤとしての、フォワードとしての力。だからこの人格でシュートを決める。決めなければ。それが、
ファドラを抜き去り、続いてケイソンとタイタンも1人で突破する吹雪。切羽詰まった様子の吹雪はエターナルブリザードを打ち込んだ。
「予想どおり…楽しめそうだなあっ!!ドリルスマッシャー!!」
抑えきれない興奮、そして高揚感。そんな様子のデザームはドリルスマッシャーを繰り出す。エターナルブリザードが押していたように見えたが、ぎりぎりのところで弾き返された。
「…なんだ?今のは…」
「っもう一度だ!!俺にボールを回せ!!」
前回のシュートとは何かが違う。デザームが目を細め訝しげに呟くと、吹雪はフォワードの自分までもが不必要になることを恐れ、振り返って仲間にそう叫んだ。豪炎寺はそれを静かに見つめる。
「エターナルブリザードッ!!」
そして打ち込んだシュートはまたもやドリルスマッシャーに弾かれる。今度は先程よりも簡単に防がれてしまった。「そういうことか…」何かを理解したのか、デザームがそうこぼした。
「それじゃあ、2人が揃えば完璧ってことだな!」
ドリブルで駆け上がっていく吹雪の頭の中で、あのときの父親の言葉が再生される。シュートを決めてこそここにいる意味が、価値があるんだ。完璧に、ならなきゃ…価値が…。
「エターナル…ブリザ────ドッ!!!!」
気迫のこもったそのシュートは、呆気なくワームホールによってデザームの足元に埋まった。もはや、ドリルスマッシャーを使うものでもないと言うように。
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作者名：不二市
| 作成日時：2018年4月23日 23時
