107話 ページ10
「いくで塔子!」
「いいよリカ!」
「「バタフライドリ──ム!!」」
次はバランスを崩さず2人で蹴ることに成功した。しかし真っ直ぐゴールへ向かうと思われたボールは途中で急激に威力を失い風に乗って海の方に行ってしまう。
『あれは…』
「うおおおおおっ!!」
その先にはまたもやあの少年がいた。あろうことか不安定な体勢でボールを蹴り返し、波を突き抜けて立向居の方へ。予想外のことに構えられていなかったとはいえ、それはゴールに突き刺さった。
「ねえ君!サッカーやってるのか…?」
「ふいーびっくりしたぜー」と1mmも思ってなさそうな様子で海から出てくる。駆け寄った円堂が尋ねると「そんなもん1回もねえよ」と返された。
「サッカー、やってみないか!?」
「あ?」
「あんなすごいキックができるんだ!やったらすっげー楽しいぜ!!」
愕然とした円堂だが、はっとして彼を誘う。しかし「冗談はよせよ、俺はサーファーだぜ?」と笑い飛ばされた。円堂がなんとか説得しようとしても興味がないと跳ね除けられる。
「やらなくて正解だ。ド素人が俺たちのレベルに着いてこられるはずがないからな」
静観していた鬼道が口を開いた。また海に入ろうとしていた彼はその言葉に足を止め、鬼道の前に立ち不満げな顔をして突っかかる。
「いくら身体能力が優れていようと、やったことがない者がすぐにできるほどサッカーは簡単じゃない」
「はっ!!さっきの見ただろ!ちゃんと蹴り返したじゃねえか!!」
「一度だけな」
言葉を続ける鬼道。言葉の節々で彼をド素人として下に見ているように聞こえるが、それは彼にサッカーをさせるためであり本心ではない。そしてついに「サッカーやってやるよ!!」と言った彼は、最初から鬼道の手の上で転がされていた。
「歓迎するぜ!!えーっと…名前は?」
「俺は綱海。綱海条介だ!!」
砂浜での練習に新たに綱海が加わった。水着のままではさすがに危ないので着替えに行かせる。戻ってきた彼は橙色のTシャツに茶色の半ズボン、雷門の靴下と靴を履いていた。鬼道のおかげでやる気は充分である。
「さあ、練習再開だ!」
「よしいくぜ!」
最初のボールは綱海から。後ろにいた水城に「あそこに蹴り込めばいいんだよな?」と円堂の立つゴールを指差して尋ねる。『え?うん、そうだよ』と返されるや否や思いっきり蹴り込んだ綱海。あまりにも突然のことに塔子とリカは呆然とし、円堂が辛うじてパンチングで弾いた。
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作者名：不二市
| 作成日時：2018年4月9日 0時
