37話 ページ37
『禁断の技…?』
「皇帝ペンギン1号は禁断の技だ!二度と使うな!」
「怖いのか?俺如きに追い抜かれるのが!!」
「違う!!分からないのか!?このままではお前の体は…!」
「敗北に価値はない。勝利のためなら…俺は何度でも打つ…!!」
鬼道が言い聞かせるが佐久間は聞く耳を持たず自陣へ戻る。これが、強さに固執した人間の末路だと言うのか。口ではああ言いながらも足元は覚束ない。そんな仲間を見て鬼道は顔を歪ませ、影山のいる場所を睨み付けた。
『鬼道君、禁断の技ってどういうこと…?それに二度と打つなって…』
佐久間が去ると、彼の様子を気にしながらも水城は鬼道に尋ねる。他のメンバーも鬼道の周りに集まってきた。
「…皇帝ペンギン1号は、影山零治が考案したシュート。恐ろしい威力を持つ反面、全身の筋肉が悲鳴を上げ激痛が走る。体にかかる負担があまりにも大きいため、二度と使用しない禁断の技として封印された…」
『そんな技を…』
「あの技を打つのは一試合に2回が限界…。3回目は…」
「二度とサッカーができなくなるということか…」
言葉を切った鬼道に円堂が続ける。そしてまだ残る痛みに顔を歪めた。シュートを受けた円堂でさえダメージを負ったのだ。鬼道が言うには、円堂もあともう一度シュートを受けると立っていられなくなるらしい。なるほど、相手側も無傷ではいられないようだ。
『なら、佐久間君にボールを渡さなければ大丈夫なんだね?』
「ああ、この試合の作戦が決まった。佐久間にボールを渡すな!」
「その作戦、大賛成だ!目の前でそんな最悪な光景は見たくない」
「僕もディフェンスに入るよ」
「一之瀬、吹雪…佐久間のマークを頼む」
どちらも佐久間と直接的な関わりはない。だが目の前で人がサッカーができなくなる瞬間というものを目撃したくはないのだ。同じサッカープレーヤーとして。
「先制された雷門!水城のドリブルで反撃開始だ──っ!!」
『ブレイヴエンブレム!』
「一青、あんな技も持ってたのか!」
素早くしゃがんで地面を両手でつくと水城を中心に青く輝く複雑な魔法陣が出現した。そこから発生した水が弥谷を呑み込んで宙に浮かび、水城がその横を走り抜けるとそれは地面に落とした水風船のように破裂する。弥谷を突破した水城は前を走る鬼道にボールを送った。
『鬼道君!』
「思い出せ!これが本当の皇帝ペンギンだ!!」
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作者名：不二市
| 作成日時：2017年9月20日 9時
