15話 ページ15
「うちの部員?」
「てことはあいつ…」
「サッカー部!?」
「あいつがかよ!!」
目を見張り口々にそう言う。誰もあの悪戯小僧がサッカー部員だとは思っていなかったのだ。
「はい…木暮というんですがそれが困った奴でして…。周りは全て敵だと思っているというか…」
『周りが全て敵…?』
「ええ…。っ観自在菩薩行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄舍利子色不異空…」
『!?』
木暮の説明をしていたはずが水城を見た途端般若心経を唱え始めた少年。般若心経にはさまざまな意味があるが、その一つに簡単に言えば煩悩退散的な意味がある。まあつまりそういうことだ。
「…失礼しました。それで、私たちも練習させるよりまずは精神を鍛え直すことから始めた方が良いのではと、一から修行をさせているのですが…」
何事もなかったかのように再び説明を始める少年に苦笑いの雷門イレブン。鬼道はなんとなしに水城を自身の背後に行かせた。
「いくら説明しても、木暮は自分だけが苛められていると決めつけて…。あいつにとっては仕返しのつもりなんでしょう」
そう言って例を挙げていく。先程塔子がかかったような落とし穴に落としたり、靴と床をくっつけて転ばせたり、サッカーボールをペイントボールにすり替えて塗料まみれにさせたり。
「かなり性格歪んでんな…」
土門が苦笑いしながらそうこぼす。「同じサッカーをする者として恥ずかしい」目金はそう言うが、後輩に肩揉みさせておいて小言を言う先輩もけっこう恥ずかしい。そう思うが口には出さない雷門イレブンは苦い顔だ。
「でもどうして信じられないのかしら…」
「……木暮は小さい頃、親に裏切られたようで…」
「え、親に…?」
「ええ、それ以来、人を信じることができなくなったみたいなんです…」
秋の呟きへの答えに春奈が反応する。そしてそれに反応した鬼道を水城は見たのだが、そこの家庭の事情を知らない水城はただ首を傾げるだけだった。
「…で、何か私たちに御用でも?」
「あっそうそう、」
「実はこちらに、エイリア学園から襲撃予告が来たと聞きまして」
「襲撃予告?…ああ、そのことですか」
木暮の話で後回しにされていたが、まだ本題には入っていなかったのだ。塔子が言おうとしたところでずっと傍観を決め込んでいた瞳子が前へ出る。それに対して何でもないように答える少年。
「俺たちも、一緒に戦おうと思ってさ!!」
「…そうですか。ではどうぞ、ご案内いたします」
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作者名：不二市
| 作成日時：2017年9月20日 9時
