一匹狼。【Shota.W】 (ページ10)

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河中｢あーかっこよかったー！｣

｢…ほんとに終礼までいたね……｣

あれから途中で何度も『帰ろう』と言っても、

『他の子も見てるから大丈夫だって！』と言いくるめられ、

結局最後の最後まで居座ってしまっていた。

入部希望でもないのに大丈夫か、と心配してるのは

どうやら私だけらしい。

｢あ、でも渡辺くんもすごかったよね｣

河中｢渡辺くん？見てなかった｣

｢え!?｣

そんな扱い…？笑

いやたしかにずっと隅の方で自主練してたけど…！

河中｢いやいや、あの場にいた全員が注目してなかったと思うけど。

したとしても、Aを助けたときくらいでしょ｣

｢えー…？そうかな｣

河中｢しかも渡辺くんってずっと寝てる人じゃん。

だらけてそうで嫌だー｣

｢そんなことないんだけどなー｣

そんな話をしながら、帰り道を歩いていった。

ーーー

次の日も、渡辺くんは通常運転で寝てる。

昨日の彼はどこへやら。

しかも今日は、初めての遅刻だったし。

やっぱ疲れてるのかな。

黒板に書かれたことをノートを写しながら

ぼんやり考えてるうち、

やっぱり昨日のことが思い出されていく。

練習中でさえも言葉を発しなかった渡辺くんが、

あんな体育館に響くくらいの大声で私の名前を呼んだことが未だに信じられない。

助けてくれた…っていうか、

あれは『助けた』のうちに入るかすら怪しいけど、

ボールが私に当たらないようにしてくれたのはすごく嬉しかった。

朱里は『だらけてそう』って言ってたし、

たぶん他の人にとってもそうなのかもしれないけど、

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渡辺くんは、すごく優しい人だ。

そして今日も、

渡辺｢ねぇ｣

背中をシャーペンでつつかれる感覚。

眠たそうで、寝起きだからかちょっと低い声。

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渡辺｢…ごめん、ちょっと見せてもらっていい？｣

｢うん、いいよ｣

なんでだろう。

渡辺くんにノートを見せてと言われ続けて少し経つのに、ちっとも嫌とは感じない。

むしろ、少し嬉しいくらいだ。

宮舘｢翔太はそろそろ若林さんばなれしないとね｣

幼なじみの宮舘くんが

呆れてそう言うくらいなのに。笑