一匹狼。【Shota.W】 (ページ20)

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河中｢お、Aー！｣

｢あ、朱里おはよー！｣

今日はバスケ部の試合。

まだ県大会とかの大きな大会じゃないから、

全校応援とかはないって聞いたけど………。

｢え、あれうちの制服じゃん｣

河中｢そりゃそうだよ。女子結構来るらしいよ？｣

ちょこちょこ見かけるうちの高校の制服の人。

私たちは私服だけど、制服で来てる人は試合のあとそのまま学校に行く人たちなんだろう。

｢そこまでして見たがるものなんだ｣

河中｢…あんた、

それ他の女子の前で言っちゃダメだからね｣

｢…ハイ……笑｣

発言には気をつけないとファンクラブ(？)の方々に睨みつけられかねない。

ただ単に見たいだけなんだけどなぁ、私は。笑

河中｢てかA、それ何入ってるの？｣

朱里が私の持ってる紙袋を指さす。

｢これ？差し入れ！｣

いろいろ迷った結果、

はちみつレモンを作ってきた。

｢あと誘ってくれたお礼に、渡辺くんにクッキーも｣

誘われた後にラインで聞いたことなんだけど、

なんでも渡辺くんはレギュラーだそうで。

クラスの一匹狼な感じと

打って変わってガンガン行くらしい。

それはそれで楽しみなんだよね笑

｢でもさ、

これ作ったはいいけどいつ渡せばいいんだろうね｣

河中｢試合終わった後じゃない？｣

｢そっか、そうしよう｣

喜んでくれるといいなあ、と思いながら、

ファンクラブの方々に負けないようにいい席をとった。

コートを覗き込むと、

もう既に両チームがアップをしているのが見える。

｢あ、渡辺くん｣

ていうかこうして見たら渡辺くん白いな。

河中｢また渡辺ー？｣

｢別にいいでしょ、すごい優しい人だし｣

それに、こうして試合に誘ってくれてるわけだし。

そのとき、渡辺くんがこっちを見上げた。

バッチリ目が合ったので、手を振ってみると。

『ありがとう』と口パクして、

渡辺くんはちょっと笑いながら

手を振り返してくれた。

何気に渡辺くんが笑った顔を見るのは、

今まで片手の指で数えられるほどしかない。

だから笑った顔を見られたときは、

ちょっと嬉しいのだ。