じぇっつなかんづめ。【短編集】② (ページ8)

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◇井上瑞稀ページ8

Aside

｢あーよかった……｣

瑞稀さんを見送って、部屋のドアを閉める。

ベッドに腰掛け、一息。

｢ちゃんと話しかけられた～…｣

ちょっとずつでも仲良くなれれば、と思って話しかけてみたけど、思いのほか盛り上がった。

すごく嬉しい。

これからも好きなものを教えてくださいと言ってもらえたし、私も瑞稀さんの好きなものを知りたい。

今まで執事さんとここまで話したことはなかった。

というのも、私がちょっとコミュ障だから。

なおさなきゃなおさなきゃと思うのに、いざ人を目の前にすると勇気がなくなってしまう。

このままじゃ、お父様やお母様のように世界各国を飛び回って仕事なんてできない。

初対面でも、男の人でも、人見知りをなおすためには選り好みしてられない！

というわけで、まずは瑞稀さんと仲良くしようと思った。

毎朝お庭の手入れをしているのを知っていたから。

でも、いつもは部屋の窓から見るだけで

鉢合わせるのも緊張するから、瑞稀さんが去っていったあとにお庭に行っていたけど。

今日はそうはいかないって思って、思い切って話しかけてみた。

同い年くらいということもあって、共通の話題も多かったし、楽しく話せた……と思う。

ーーー

コンコン

｢はーい｣

瑞稀｢お嬢様、瑞稀です。今よろしいですか？｣

｢大丈夫ですよ～｣

ドアを開けて顔を覗かせたのは、瑞稀さん。

手にスマホとイヤホンを持っている。

瑞稀｢約束のやつです｣

｢はい！楽しみですね｣

こないだは私が話してばっかりだったから、今日は瑞稀さんの番。

持ってきてくれたクッキーをつまみながら、ゆっくり音楽について語った。

ーーー

｢最後の曲、すごくよかったです！｣

瑞稀｢そうなんですよ！嬉しいです、お嬢様にそう言っていただけて｣

友達と話す以上に盛り上がって、楽しかった。

｢…学校の子とも、こんなふうに話せたらいいんですけど｣

私のお気に入りの曲を否定されてから、ちょっと話しかけづらくなってしまった。

元々、そんなに大の仲良しというわけでもなかったんだけど…。

瑞稀｢お嬢様、大丈夫です｣

｢？え？｣