じぇっつなかんづめ。【短編集】② (ページ7)

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A｢でもよかったです、いい曲だって言ってくれる人が身近にいて｣

スマホを充電器にさし、イヤホンを器用に結びながらそう言うお嬢様。

｢俺も、あまり周りにいなかったので嬉しいです｣

なんか、急にぐっと距離縮まってない？

…ここは、流れに沿って………

｢俺、お嬢様の好きなものを知れてよかったです。

これからも、音楽だけじゃなく他の好きなものも是非教えてください！｣

A｢っはい！｣

するとお嬢様はスマホをまた手に取り、また俺の隣に座り込む。

音楽アプリをひらいて、好きな曲をたくさん教えてくれた。

俺が好きなものもあれば、まったく知らないものもある。

聞けばいい曲ばかりで、いい曲ですねと言う度にお嬢様は嬉しそうに笑ってくださる。

ーーー

A｢すみません、私ばっかりが語り倒して…｣

｢いえ、俺もすごく楽しかったですしいい発見になりました。

お嬢様の貴重なお時間を俺にくださり、ありがとうございました｣

俺とお嬢様は、主と執事という関係。

どこぞのドラマやマンガじゃあるまいし、甘ずっぱい雰囲気になることなんて皆無に近いだろう。

でも。

A｢けど、申し訳ないですよ…｣

｢でしたら、今度は俺の時間をもらっていただけませんか？｣

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チャンスくらい、あってもいいでしょ。

｢今度は俺のおすすめも、聞いていただけると幸いでございます｣

A｢もちろんです！楽しみですね｣

｢…ふふ、はい｣

高校に通っていないから、世間一般の『青春』なんて俺には無縁。

でも、この場が俺の『青春』じゃないかな。

お嬢様という、かけがえのない存在が近くにいらっしゃる。

それだけで、なんかもう十分な気がしてきた。