じぇっつなかんづめ。【短編集】② (ページ13)

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◇橋本涼ページ13

Aside

小さい頃から、暗いところは怖かった。

たしかあれは、まだ幼稚園生くらいの頃。

いつもの如く両親は出張やら残業やらで家にはいなくて、さらに台風まで接近しているらしくひどい雨だった。

でも雷も強風も怖くなかったから、いつもどおり絵本を読んだり絵を書いたりして、寝るまでの時間を潰していた。

そんなときだった。

雷が落ちて、停電になったのは。

私の部屋はその頃、泥棒に入られたりしないように基本的に鍵がかかっていた。

でもそれが仇となった。

あたりは真っ暗、こんなことは初めて。

小さかった私はかなりパニックになった。

いろんな人が私の部屋に駆けつけてくれたけど、鍵がかかってて入れなかった。

開けてくださいと何度も言われたけど、パニックと動揺でうまく動けずにいて。

それから、暗いところを怖いと感じ始めたんだっけか。

ーーー

ブオー……

｢龍斗さんすみません、いつもありがとうございます｣

龍斗｢いやいや俺が望んで引き受けた仕事なんで｣

お風呂上がりに髪を乾かして、
長い髪を寝てるときに熱くならないようにゆるくまとめてくれるのは、龍斗さんの役目らしい。

もうさすがに高校生なんだから大丈夫だと言ったのに、これ以上仕事を奪わないでくださいと言われ…←

でも今では、この時間が地味に龍斗さんとの仲を深められる時間だったりして。

実は楽しみなんだ。

龍斗｢終わりました｣

｢ありがとうございました。じゃあ、おやすみなさい｣

バタン

ベッドわきのスタンドの電気をつけ、部屋全体のあかりは消す。

そうしないと、寝付けない。

明るすぎても、暗すぎても。

我ながらめんどくさいとは思う。しかも高校生なのに。

ゴロゴロ…

｢雨ひどいな…｣

スマホの天気予報アプリによれば、夜中にかけてどんどんひどくなっていくんだとか。

｢【落雷の恐れあり】か…｣

ひどければ停電するところもある、という追記まで。

あの日みたいになったりするのかな。

……いやいや、考えすぎでしょ。

そう思いなおし、目を閉じた。

ーーー

｢…、｣

急にふと目が覚めた。

締め切ったカーテンからでも、ときおり青白い光がピカッと光っていた。

でもベッドわきの電気は相変わらずいつもどおりの優しいオレンジ色の光を保っていて。

一瞬、停電したかとびびった自分が恥ずかしくなった。