9話 認められることだな｡ ページ10
｢…悪いな｡｣
帰り道｡静まり返る廊下で長谷川はカフカに軽く謝罪をした｡
｢？｣
｢蜂谷のことだ｡許してやってくれ｡彼女にも､彼女なりの考えがあるんだ｡｣
普段ならば叱りつけるところだが､蜂谷の素性を知る長谷川はそれができなかった｡彼女の痛みも苦しみも､怒りも怨みも､全て理解し､納得のいくものだったから｡
だって､仕方がないだろう｡
｢…仕方がないと､思っています｡現状俺は兵器として生かされている｡それもいつ爆発するか分からない地雷源｡むしろ､これが当たり前かと｡｣
カフカの言葉に､長谷川が一瞬だけ口を閉ざした｡が､しかし｡すぐに口を開き､言葉を続ける｡
｢…恐らくだが｡蜂谷が君に心を開くことは一生ない｡君がいくら人間らしかろうが､いくら結果と実力を示そうが､蜂谷にとっての君はあくまで怪獣だ｡｣
｢何故ですか？ここは完全実力主義の第一部隊でしょう｡｣
長谷川の言葉に反論したのは､キコルだった｡
しかし､蜂谷にとってそれは関係のないこと｡彼女が鍛えるかどうかの基準は､たったひとつしかないのだから｡
｢…蜂谷は鼻がいい｡伸びしろのある人間｡才能のある人間｡使えない人間､使える人間｡そういう臭いを嗅ぎ分ける｡四ノ宮隊員も言われただろう､臭うと｡｣
｢…！あ､はい｡｣
｢あれはそういう意味だ｡｣
臭う人間を採用し､鍛え､育てる｡
そうして作っていったのが､今の第一部隊なのだ｡
(…そうか､あれは…)
そこでようやく､キコルは初日のあれがただの悪口ではなく､ただの褒め言葉であることを知った｡
いや､褒め言葉というには少々言葉がおかしい気もするが､少なくとも悪い評価ではなさそうだ｡
…と｡そこまで聞いて､理解した｡
｢…もしかして､怪獣の臭いも…｡｣
｢その通りだ｡蜂谷は怪獣に目の前で両親を殺されている｡防衛隊に入ったのも敵討ちのためだ｡一生許すことはないだろう｡｣
｢っ！｣
カフカには､分からない｡
大切な誰かを目の前で失う｡そんな経験､ありはしなかったから｡
｢とはいえ彼女もプロだ｡第一部隊の兵はそのほとんどが彼女に鍛えられた｡教えを乞いたいなら､認められることだな｡｣
｢…はい！｣
高い高いその壁に､カフカは覚悟を決めた｡
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さわ(プロフ) - すぶたさん» コメントありがとうございます！これかれも更新頑張ります！ (2022年3月27日 9時) (
レス) id: 5409f31f4d (このIDを非表示/違反報告)
すぶた(プロフ) - なんだこの面白すぎる作品は…！！続きが楽しみすぎて夜しか眠れない(‘ᾥ’)更新待ってます！！ (2022年3月26日 0時) (レス) id: d948df5e48 (このIDを非表示/違反報告)
さわ(プロフ) - ともさん» リクエストありがとうございます！確かに亜白隊長と絡んでない…今後番外編として書かせていただきます！ (2022年3月17日 18時) (レス) id: 5409f31f4d (このIDを非表示/違反報告)
とも - リクエストしたいです！亜白隊長との絡みを見てみたいです (2022年3月17日 17時) (レス) id: 3035439a9e (このIDを非表示/違反報告)
さわ(プロフ) - 朔さん» コメントありがとうございます！これからも応援よろしくお願いします😭 (2022年2月19日 13時) (レス) id: 5409f31f4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さわ | 作成日時：2021年12月8日 16時
