20話 誰より正しく｡ ページ22
｢…ほんとに大丈夫かな｡怜ちゃん｡｣
｢安心しぃ､放っといてええ｡｣
心配そうに蜂谷の背を見送る椛に､保科は笑ったまま答えた｡
蜂谷怜｡人の心を手のひらの上で弄び､ヘラヘラと笑って､巧みに本心を隠す｡彼女は佐倉を嫌っているが､保科から言わせれば2人は似たもの同士｡ただ､佐倉の方が1枚上手なだけの同族嫌悪だ｡
しかし､そうと思いながらも彼女の言葉は肯定してやる｡だって彼女は､未だ子供のままなのだ｡
いつもフラフラと自由気ままな猫のようで､餌という単語に敏感な愛らしい犬のようで､どこか掴めない幽霊のようでもある彼女は､案外わかりやすいところがあったりする｡
1人でいた頃は永遠と本を読んでいたようで､妙に難しい言葉や曲がった言い方をする｡それに加えて､本人も無自覚の言葉足らず｡それが相まって､他人に理解されにくい。
けれどその言葉の裏側には､誰よりも他人を思いやる優しさがある｡
彼女は､カフカを｢8号くん｣と呼びながら三人称として｢彼｣を使った｡｢彼｣という単語を使う対象は話し手､聞き手以外の男性に対して｡
要するに､彼女はカフカを｢怪獣だ｣と言いながら､人間に対して使う敬称を用いている｡心の中では､きちんと人として対話している｡だからこそ彼女は怒りを露わにするし､｢近づかないで｣と警告をする｡
全くもって､人付き合いが下手すぎる｡幼少期に人と関わりを持てなかったからか､彼女は人との距離を測り損ねることが多い｡相手の気持ちは妙に察するのに､その後どうすればいいのか分からない｡
だからこそ､誰に対しても針を向ける｡自分の縄張りに､心の中に入ろうとする者に､近づこうとしてくる者に､必死になって針を向けるのだ｡
蜂は､従来群れを成す生き物なのに｡
『私は､そんなもの無意味だと思う』
人情というものを否定する割に､情に厚い彼女は｡誰より正直であろうとする彼女はきっと誰よりも純粋で､健気で､
｢真面目で素直で､ええ子やね｡｣
誰より正しく､子供なのだろう｡
21話 半分くらい嘘だね｡→←19話 力になりたいと思うよ｡(変更)
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さわ(プロフ) - すぶたさん» コメントありがとうございます！これかれも更新頑張ります！ (2022年3月27日 9時) (
レス) id: 5409f31f4d (このIDを非表示/違反報告)
すぶた(プロフ) - なんだこの面白すぎる作品は…！！続きが楽しみすぎて夜しか眠れない(‘ᾥ’)更新待ってます！！ (2022年3月26日 0時) (レス) id: d948df5e48 (このIDを非表示/違反報告)
さわ(プロフ) - ともさん» リクエストありがとうございます！確かに亜白隊長と絡んでない…今後番外編として書かせていただきます！ (2022年3月17日 18時) (レス) id: 5409f31f4d (このIDを非表示/違反報告)
とも - リクエストしたいです！亜白隊長との絡みを見てみたいです (2022年3月17日 17時) (レス) id: 3035439a9e (このIDを非表示/違反報告)
さわ(プロフ) - 朔さん» コメントありがとうございます！これからも応援よろしくお願いします😭 (2022年2月19日 13時) (レス) id: 5409f31f4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さわ | 作成日時：2021年12月8日 16時
