悪い男に出会う前。 (ページ2)

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2話ページ2

昔からの、俺とあいつの下らない

だけど俺にとっては毎年楽しみで仕方がないたった一つの約束。

というか、唯一あいつが俺とした約束で守ってる約束。

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もう何年前か覚えてないくらい前の話だ。

あいつが手作りのクッキーを持ってきたことがことの発展。

みんなに渡そうか迷ってるんだけど…と言って自信なさそうに俺に持ってきたそれ。

「へぇ、お前こーゆーのつくれんだ。」

「は、初めて作った…」

やっぱりな、お前が料理とか聞いたこともねぇよなんて心の中で思いながら

味見がてら袋に入ったそれをパクリと口にほおり投げた。

「うわっ、お前まじこれパッサパサだぞ。」

それはまぁ、なんというか初心者がよくつくりそうなパサパサのクッキーだった。

「ちょっとー！パッサパサってなによー！かしてよ！そんなことないんだから！」

そう言って自分のクッキーを食べて

「なにこれ、パッサパサ…」
と言った時のあいつの顔は今でも忘れられないくらい傑作。笑

「もっと食べれるやつ作って渡せよな～」

そう言いながら袋をヒョイっととって笑った。

「もー、うるさいなー。見てなさいよ！バレンタインはもっと美味しいの作ってあげる！」

「おー、楽しみにしてる笑」

そう言ってもう一度サクッという音を立てて俺の喉へと通ったクッキーはやっぱりパサパサだった。

これは余談だが、あの後仕事だと言ってパタパタとAが走り回ってる間に

誰にも譲らずひとりでクッキーを完食したのは、今でもあいつには内緒の話だ。