二十二日目の起こし方 ページ25
〈芝健side〉
(ﾍﾞｼｬｯ)！？！？
音を立てて「何か」が俺の顔の上に落ちてきた。
目を開けようとするがまつ毛がその物体にくっついてなかなか開かない。
そいつを剥がそうとして掴んだその瞬間…
(ﾑﾆｭ)
芝:「うわぁぁぁ！？なにこれ何コレ！！」
慌てる俺を助けてくれたのは隣の国の王子様…ではなく口元をニカッとさせた逢恋だった。
逢恋:「なかなか本物っぽいでしょー？このクラゲたちは！暇を見つけていっぱい作ったんだ〜」
見ると天井やら壁やらにとてもリアルなクラゲが沢山引っ付いていた。
それに種類もバラバラだし大きさも様々。
芝:「えぇ、これ全部逢恋が作ったの！？いやぁ、すげぇわ。やるなぁ」
逢恋:「いやぁ、それほどでも〜」
自分に引っ付いていたクラゲちゃんを抱えて傘の部分を撫でながら起き上がり辺りを見回す。
へぇ、よく見たら棚とかドアにもいるよ…。
逢恋:「あっ、健！その子と「その子」を近づけたらダメだよー！！」
芝:「ん？「その子」？？って……」
逢恋はドアノブに引っかかっている美しいクラゲを指さす。
逢恋:「これは「アマクサクラゲ」といい、日本では毎年8月頃に九州西岸の天草地方でよく見られ、毒性が強く、刺された場合強い痛みを感じることがある。また、アマクサクラゲは他種のクラゲを食す捕食者である。」
どうやら逢恋が詳しいのはトカゲだけじゃなくクラゲもらしい。
逢恋:「ちなみに、健に引っ付いていたその子は「タコクラゲ」といい光合成することが可能なクラゲ。また、毒性が弱く、捕食者であるクラゲに食べられることも多い。」
機関銃かの如く話し始めた逢恋のことは、もう自分にしか止められない。
逢恋がブレーキをふむまでひたすら話し続けるのだ。
えーっと、つまり逢恋の話を噛み砕いていくと…
俺についていたクラゲは弱くて、ドアノブにいるクラゲはめっちゃ強いから危ないよ。
ってことだな。うん。間違ってはないよな。
近づいてはいけないのはわかった。
じゃあさ…
芝:「どうやって出ればいいんだよー！！」
逢恋:「健！シーっ！もう、こういうのはね…」
逢恋は俺が抱えていたクラゲをベッドにポイッと投げる。
逢恋:「こうしたら、タコクラゲちゃんはアマクサクラゲちゃんに食べられずに済むね！健は……ファイトっ！」
ファイトっ！じゃないの。
このクラゲたちが本物だったら俺は今命の危機に晒されているのか…。
この子達が偽物でよかった…
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作者名：わさび | 作成日時：2020年10月10日 23時
