How to save a life (ページ30)

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ー病院内地下駐車場ー

井上「力及ばず申し訳ありません」

棺に入った暁人くんとご両親に向かって井上先生が頭を深く下げる。

「お世話になりました、井上先生。A先生も、ありがとうございました。」

『いえ……何も出来ず…』

「暁人は良い先生に診てもらえました。ありがとうございました。」

井上先生と二人頭を下げて霊柩車を見送った。見えなくなった所で、ゆっくりと頭をあげる。

井上「戻ろうか」

『はい』

遠くで花火が上がる音がした。

暁人くん、この花火見たがってたな。

ーICUー

優輔くんの姿はベッドにはなかった。きっと橘先生が連れ出したんだろう。
友だちを失った悲しみを少しでも和らげるために。

空っぽになった暁人くんのベッドを見つめる。

さっきまでここにいたのに、あの子はいない。どこを探してももう出会う事はない。

『うっ！………』

暁人くんが死んだという現実が今になって押し寄せる。握った右手が食い込んでも気にならない

もっと早く検査していれば

もっと早くバチスタに踏み切っていれば

もっと長くあの子は生きられたのに！

一度流れ出した涙を止める事が出来なくて非常階段へと逃げた

ここはフェロー時代からの避難場所

医者になって初めて患者を亡くした時もここで泣いた。

誰にも見つかった事がないあの人以外にはー

「やっぱりここにいたのか。」

その人は静かにわたしに寄り添ってくれる

「お前が泣くときは決まってここだからな」

『ふっ…うっ……耕…作』

手で顔を覆うけど、全然涙は止まってくれない

「泣けるだけ泣けばいい。俺はずっとAの隣にいる。」

耕作の方に抱きしめられて、もう涙が枯れるんじゃないかっていうぐらい泣いた。

「井上先生が言ってた。暁人くん、熱が出て苦しいはずなのに、お前が診察に来ると嬉しそうな顔をする、お前の笑顔を見ると決まって暁人くんも笑顔になるんだって。」

暁人くん…「先生の手、あったかい」そう言ってくれた。

「A、オペをする事だけが医者の仕事じゃない。Aはちゃんと暁人くんを救ってた。」

耕作がわたしの目を見て伝えてくれたその内容はわたしにとって救いだった。

医者は神様じゃない。助けようと思っても助けられない患者だっている。

何も出来ず側に寄り添う事しか出来ない時もある。

それでもどんな薬や治療よりも医者の笑顔が患者を救う事もあるのだー