How to save a life (ページ29)

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『ごめん、遅くなった。状況は？』

井上「A 来てくれたのか！」

藍沢「心タンポナーデだ」

心タンポナーデ…じゃあ、心破裂まで時間が無い！

『橘先生、穿刺じゃ間に合いません！』

開胸しましょう

そう言おうとした瞬間だったー

オペ室内にアラームが鳴り響く

『心外の加賀美呼んで！開胸する！』

わたしが手袋とガウンを着けたのと同時に、加賀美がオペ室に入ってくる。

『心タンポナーデになった、今から開胸する。加賀美手伝って！』

加賀美「開胸って…」

『開胸して人工心肺にのせれば何とか』

加賀美「人工心肺にのせてどうする？この子は離脱できない！」

頭では分かってた。拡張型心筋症でここまで来たら人工心肺にのせても、エクモ(体外循環装置)をつけても離脱ができない。

ポンプもエクモも、装着する時の条件は「離脱できるだけの心機能が残存している」ことだ。

暁人くんにその心機能は……残ってない

でも、諦めきれない！

『人工心肺のせて……今からバチスタする！メス！』

加賀美「…A。いくらお前でも無理だ！」

冴島さんからメスをもらおうとしたわたしの手首を加賀美が掴んだ。

加賀美「バチスタはできない。やれるならもっと早くにやってた、そうだろ？
このまま綺麗な体のまま両親の元へ返してやれ」

『……』

その通りだった

バチスタが出来るなら、とうにやってた……

加賀美を見て井上先生を見る。

井上先生がゆっくりと首を横に振った。

心停止を知らせるアラームが鳴り響いた。

それはまるでわたしの負けを知らせるように

救命のスタッフによってアラームが切られた。主治医の井上先生が死亡宣告をして、呼吸器から外される。

呼吸器から外され、点滴の管を抜いた暁人くんはずっと小さく見えた。

こんなに小さな体で

今日までお疲れ様…暁人くん

『よく…頑張ったね』

暁人くんの右手を握ってゆっくりとその手を撫でる。

今日の午前中にわたしに親指を上げてみせたその手が握り返す事もなければ再び親指を立ててくれる事もなかった。

『先生……後で会いに来るって言ったのに…遅かったね…ごめんね暁人くん…ごめ…ん』

白石「A先生…」

小さく震えるその肩に白石が触れようとしたのを遮ったのは藍沢だった。

2人は小さく頷くと藍沢がその肩に手を添えて、支えるように寄り添った。