How to save a life (ページ26)

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『はい、Aです。』

「井上だ。優輔くんが吐血した。急変だ、今から初療室に移す」

『そんな…すぐ行きます！』

ー救命センター初療室ー
『どうですか？』

初療室に駆けつけると、ちょうど優輔くんも初療室についたところだった。

優輔くんの口周りには血液が付いている。

『吐血……』

補助人工心臓のための抗凝固剤で出血しやすくなってるからか！

橘「とりあえず、ファイバーで観察しよう！」

橘先生が内視鏡の準備をして、術者のポジションに立った。

『大丈夫ですか？』

橘「……ああ」

外科医は家族を切れない。

内視鏡だから、オペとは違うけれど、患者が家族である事に変わりはない。

患者が自分の子どもで、冷静な判断が出来ますか？という意味での質問だった。

ファイバーで胃内を観察していると、患者を乗せたストレッチャーが入ってきた。

チラッと目を向けると鉄串が頸部に刺さったままに男の子、側には橘先生に代わって、ヘリで飛んだであろう耕作がいた。

首に鉄串って、ハードな症例だなっと頭の片隅で思ったけど、わたしの視線はすぐに内視鏡のモニターへと戻った。

出血点は小さかった

橘「これならファイバーだけで止血できそうだ。」

橘先生が冷静に出血点にクリップをかけて止血できた。

ヘリで運ばれた方の男の子は、これから血管造影をするみたいで、カテーテル室へと出て行った。

『クリップで済んで良かった。』

わたしの言葉に母親である三井先生が目に薄っすらと涙を浮かべながら数回頷いた。

優輔くんの容体が安定して、ICUに移動する。

ベッドは暁人くんの隣

入院してる子ども達にとって、同い年の友だちはそう簡単に出来るものじゃない。

友だちが隣にいれば、ICUという環境が変わった場所で、少しでもお互いに安心できるかもしれない。

暁人「なんだ、優輔もか。」

隣に優輔くんが来た事に気付いて暁人くんが独り言のように呟いた。

橘「暁人くんは熱下がったみたいだね。聞こえないか。」

暁人「何？」

橘「うん？目が覚めたらさ、声掛けてやってよ。君がいると安心するから。」

暁人「うん。あっ！A先生もいる」

『熱下がって安心したよ。』

暁人「うん、ありがと」

『ゲーム進んだ？』

暁人「かなりね。」

会話してる最中でも目はゲームに釘付けだ。
橘先生とICUを出る前に

『寂しいだろうから、後で来るからね』

暁人「寂しくないって。」