95. 勝負の時 ページ5
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先生の背中を見送った後、静かに部屋に戻って布団に潜り込んだけど。
結局、全然眠れないまま朝を迎えた。
既読だけつけといて返事してなかった櫻井先生のLINEに。
今日校長先生に会いに行くって事と、たくさんの意味を込めたお礼の言葉を送った。
「……はぁ…。」
校長先生に "別れろ" って言われたらどうしようって。
不安に押し潰されそうになって、思わずため息が溢れた。
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−− あと10分で着く
ピコンと音を鳴らしたスマホのポップアップに映し出されたのは、二宮先生からのメッセージ。
絵文字の一つもないその先生らしい一文に、さっきまでの不安なんか吹き飛んで口元が緩んだ。
"分かりました" と返して制服に着替えて、洗面所に向かう。
「…大丈夫、だよね…」
鏡に映る自分の制服姿が。
"先生と生徒" っていう、どうしても非現実的な現実を思い知らせる。
−− 着いた
胸がギリリって音を立てて、涙が溢れそうになった時。
先生からの新しい吹き出しが増えて。
−− 今行きます
震える指で送信を押して、気合いを入れるように頬を両手でパチンと叩くと。
まだ寝てるお母さんを起こさないように、そっとドアを開けて外に出た。
「…さむっ、」
思わず声に出してしまうほど外は寒くて。
手を擦り合わせながら、先生の車が止まってる大通りまで走った。
目に飛び込んできた先生の車に、近付いてって車内を覗く。
"コンコン" とノックすれば、こちらに移される視線。
開けてくれたドアから助手席に乗り込めば。
先生は弄っていたスマホをポケットに突っ込んで、怠そうに体を預けてた背凭れから体を離した。
二宮「…ひでぇ顔(笑)」
「…っ！？」
眠れなかった事なんて、きっと先生にはバレバレで。
ハンドルに両腕を預けて、ふん、と鼻を鳴らして笑う。
二宮「怖い？」
「…怖くないです。」
前も、この大通りに止まった先生の車に乗った事がある。
あ、そう。私の誕生日。
先生に "ウチくる？" って誘われたのが嬉しくて。
淡い黄色のワンピース着て海に行ったんだ。
あの時先生は、もう東京を離れる決心がついてたって事だよね。
なのに、そんな事も知らずに能天気にはしゃいでた私って…。…馬鹿みたいだ。
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卯奈(プロフ) - キュンキュンして微笑ましいお話でした。とても面白かったです！だけど潤くんはどうなったのですかね？ (2018年4月7日 23時) (
レス) id: 2ee62e6d6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ame | 作成日時：2017年2月9日 14時
