虚3 ページ5
長谷部side
「日記はもうすぐで埋まります。
ごこちゃんを直せば悲しんでいる人を救えるし、僕が死ねばふうとの約束も守れるんです。
だから」
ーー受けてくれますよね？長谷部さんーー
染み込んでくる言葉の一つ一つが毒薬のように体内を汚染して細胞から細胞へと広がっていって止められなくて何も考えずに頷きそうになって。
だけど雪羅様の持っている霊力の結晶の温かさが俺を否応なく現実へと引き戻し、受け入れるなと叫んでくる。
その声を聞いて、考えて、眼前に立つ雪羅様と目を合わせて、そして決めた。
「……わかり、ま した」
その時の彼の表情を表す言葉を俺は知らない。
もしかしたら天下統一を果たした時の織田信長はああいった顔をするのかもしれないが、それは俺の知り得ないものだ。
尋常ではない笑みを浮かべた雪羅様はギュッ、と俺を抱きしめ涙すら流してみせる。
ありがとうございます、と言いながら。
「よかった……これで約束を守れる。
少しはふうや父さんや母さんの顔を見れる……大丈夫、僕はまだ…………汚れきってないよ」
縋るように体を寄せられ、欲しがるようにきつく捕らわれ、責めるようにありがとうと繰り返すその少年を抱きしめ返すことはできない。
彼はそんなことを求めてはいないし俺もまたやる気になれないのだ。
彼の様な人間に対する接し方をまだ知らなかったから。
落ち着いた雪羅様は俺から離れ、よろしくお願いします、と頭を下げてから霊力の結晶を封筒に入れ、呪文を唱えてその封筒を何処かへ転送させた。
「これで、僕が死んでも霊力の結晶を使ってごこちゃんは生き返りますし、僕が生きて見習いを終えたらそのままごこちゃんを直します。
だから安心して生き残ってくださいね、長谷部さん！」
さあ、朝ごはんを食べましょう！と手を引く雪羅様は楽しそうで今にも消えてしまいそうなほど儚かった。
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合歓木(プロフ) - 雪さん» ありがとうございます！応援してもらえて嬉しいです！ (2017年4月20日 20時) (
レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - おもしろかった！これからも、応援してますね！ (2017年4月20日 20時) (レス) id: 8088c38295 (このIDを非表示/違反報告)
合歓木(プロフ) - 晋陽さん» そう言ってもらえて嬉しいです！応援ありがとうございます！ (2017年4月18日 0時) (レス) id: 20a4380b24 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ここまで一気読みしてしまいました！とっても面白いです！これからも応援しています！ (2017年4月17日 23時) (レス) id: 698e01f38a (このIDを非表示/違反報告)
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