さんじゅうよん ページ6
鳴狐side
篠の雪と大倶利伽羅、同田貫の戦いは圧倒的に篠の雪に対して不利な条件だった。
狭い室内では打刀の方が扱いやすいし2人がかりというのも大きい。
かといって蜂須賀と一緒に加勢するにもどちらの味方をすればいいのか分からない。
だが、迷っている間にも篠の雪は追い詰められていくし、新しい主も苛ついてきている。
……腹をくくるしか、ない。
「蜂須賀、殺る」
「え……何をする気だい！？」
床に置いた本体を手に取り、鞘を振り落とすようにしながら構え、走る。
篠の雪と目が合い、驚いたように目を見開く。
そして、ほぼ同時に同田貫と大倶利伽羅の刀を受け止め、横に薙ぐ。
その力を利用して一回転。
ふわりと袖が舞い、長めの髪がゆれる。
そして、横目で彼らの姿を確認すると一言だけ呟いた。
「罪人以外は斬りたくないのに」
直後に鳴ったのはゴトリという重い音二つ。
次いでピシピシとヒビの入る音。
再び舞った桜の花弁が篠の雪との間に流れる。
それは超えられない壁と超えたくない溝を表した。
「結局全員殺してくれるだなんて貴方はいい刀ね！」
偉い偉いと囁きながら篠の雪に抱きついた審神者。
だが、対照的な篠の雪はそんな言葉を聞いているはずもない。
静かに手を伸ばし、未だ宙に浮かぶ花弁を掴む。
それをすり潰すように手を握りしめ、また開く。
ああ、そうか。
彼は怒っているんだ。
自分に殺された2人に。
そして羨んでいるんだ。
先に逝けた2人に。
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