閉廷 ページ22
背もたれと肘掛けがある回転椅子に座りながら、目の前の彼は私に背を向けて左右へと行ったり来たりの動きを繰り返し、今日も鉄格子を眺めていた
仰け反りながら黙ったままいる彼に、私の頭では投げかける言葉はみつからず
私はひたすら彼の後ろ姿を眺めていた
「A先生…なに怒ってんのん？」
「別に…怒っていません…」
あの後しばらく…
まるで時が止まったかの様に法廷内はとても静かで、誰一人動いたり喋りだす者はいなかった
私は傍観者の様に彼を見つめ、自然に呼吸する事さえ出来ずにいた
『A先生…ボクの弁護士さんちゃうの？』
彼の言葉で自分の立場を思い出し、ゆっくりと立ち上がった
そして目の前の裁判官もまた…
彼の声を聞いた瞬間、ゆっくりと呼吸をしはじめた
法廷内の止まっていた時の針は少しずつ声をあげ、ゆっくり動きはじめる
『弁護人は…どう思われますか？』
私は重たい口をゆっくりとひらき、真っ直ぐ裁判官に向かって口をひらいた
『はい。安田章大の『無罪』を主張します』
その言葉を裁判官に申したてた途端、張りつめた糸が切れた様に周りがまたザワつきはじめた
そして検察の人間は、私達2人を哀れむような蔑んだ目で、口角を少しあげながら笑った顔をみせてきた
ギュっと拳を握りしめ、悔しい気持ちを必死に抑えこんでいるとガタンと物凄い音がした
物音が聞こえた方に視線をズラすと、裁判員制度によって選ばれた何人かの人間が倒れはじめていた
それにつられる様に、傍聴席の人間も次々に倒れこみはじめた
あたりは騒然とし、法廷内は大パニック
担架を持った職員や肩を貸す職員など、そしてその光景を見たマスコミはメモを取ると外にではじめた
もう裁判どころの騒ぎではなくなり、これ以上裁判を続ける事は困難だと判断した裁判官は「閉廷」を告げ、次回の日程を約束させられた
「怒ってるやん…声のトーンがいつもと違うし…」
クルっと私の方を向き、彼はジーっと見つめてきた
「A先生…俺は何も悪い事してへんよ？見てたやろう？」
見ていた…ずっと彼の事を…
見たままでいえばやっていなかったとも言えるし、逆にやっていたとも言える気がする
私は…まだ何も見えていなかったのかもしれない
彼の本当の怖さや…頭の賢さに…
「あっ…な〜A先生、お願いあるんやケド♪」
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こじゅMAMA(プロフ) - 瀬取ぐりこさん» なかなか更新せずにですみません。お返事も遅くなりました。ゆっくりと読んでいただけたら嬉しいです！ (2020年1月18日 20時) (
レス) id: a147df293a (このIDを非表示/違反報告)
瀬取ぐりこ(プロフ) - お話の構成が天才すぎて、一気に読んじゃいました！ ２に行ってきます！ (2019年10月13日 15時) (レス) id: bdea2fdbd0 (このIDを非表示/違反報告)
こじゅMAMA(プロフ) - トランスさん» コメントありがとうございます。黒安田私も大好きです。更新遅くなったりしますが、更新頑張っていきますのでよろしくお願いします。 (2016年2月1日 18時) (レス) id: cfe8eab671 (このIDを非表示/違反報告)
トランス(プロフ) - 黒安田君好きです。カッコいいですよね。更新、楽しみにしてます。 (2016年2月1日 18時) (レス) id: fad6927b23 (このIDを非表示/違反報告)
∞ぽむりん∞ - お気になさらないで下さい！検討有難うございます！期待しています♪ (2016年1月31日 17時) (レス) id: 6e7478b2bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こじゅMAMA
| 作成日時：2013年12月17日 14時
