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恋慕×憎悪の行先 ページ32
夜。
壁向こうからは虫の鳴く声がほんのり響いてくる。
そっと右腕をさすると、ふにっとした反発感が私の手を押し返した。
焦凍にぃと喧嘩したあの時はカチカチに氷漬けにされたものの、あれから二週間以上経ち、もうすっかり感知している右腕。
あの時、私は焦凍にぃが少し怖かった。
あれ以来、この気持ちは変わらず、今も私はまだ少し焦凍にぃを怖いと感じてしまっている。
でも、そんな風に思っても、腕を氷漬けにされても、私は焦凍にぃを嫌いになれなかった。
あのことがきっかけで、私はもう超えるべき一線を超えてしまったのかもしれない。
その事に気づいていなかったこの時の私は。
「A」
私の名前を久しぶりに呼ぶ焦凍にぃの声に孕んだ危うさにも、気づくことはなかった。
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作者名：emiria | 作成日時：2021年6月12日 17時
