【ヒロアカ】ブラザー☆コンプレックス (ページ11)

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厚い面の皮ページ11

消毒液や薬品の匂いがほのかにする病院の受付を通り、精神病棟へ向かう。

ここは私たちが住んでいる地域の中で1番大きな大学病院。

お母さんが入院しているところだ。

お見舞いの花束を両手でしっかりと握り、母がいる個室の扉の前まで来た。

焦凍にぃが扉を開ける。

「お母さん」

焦凍にぃの低い声が"お母さん"と呼んだ。

すると、窓の外を静かに眺めていたお母さんがゆっくりと振り返る。

たちまちその顔は嬉しさに溢れた。

「二人とも……来てくれたの」

「うん」

私はお母さんに歩み寄り、花束を渡す。

「これ、お見舞いの」

「ありがとう……！」

お母さんの顔が、私が今渡した花束の花のように明るく咲く。

私はこの時間が嫌いだ。

「焦凍」

お母さんが焦凍にぃの名前を呼ぶ。

焦凍にぃは飼い主に懐いた猫のようにお母さんに近づいた。

そのまま、お母さんは焦凍にぃの頭を撫でる。

「Aも、おいで」

「……うん」

二人してぎゅっと抱きしめられる。

この時間は幸せ。

「お母さん……」

この時間は嫌い。

焦凍にぃがお母さんを見る瞬間、お母さんしか見ない瞬間、「お母さん」と呼ぶ瞬間。

焦凍にぃはマザコンだ。

だから私は、この一瞬一瞬がすごく嫌。嫌い。

嫌で嫌で嫌で嫌だけど、それでもお母さんだから。

そこまで行ってしまえば、もうもとには戻れない気がして、私は強く目を瞑った。