ても足も�� ページ4
義勇side
「……やっと会えた……」
そう行った時の彼女は、口の端を釣り上げていた。
でもそれは痙攣のような動きで、目は笑っていなかった。
Aのてが、彼の兄に差し伸べられる。
彼の頬に、彼女の手についていた返り血がべったりとつく。
それも合間ってか、妹に似た彼の顔は恐ろしいほど狂気じみていた。
「ねえ、一緒に帰ろう」
帰る？ どこに？
あの羊羹だろうか。それとも……
――彼らの父の故郷である、英国に？
そんな考えが脳裏によぎった瞬間、ドゴ、という音がして男が吹っ飛ばされた。
「よっこいしょ……」
肩に剣を刺したまま立ち上がるA。
血に濡れた前髪が彼女の顔にベッタリと張り付いているせいで、表情はあまりうかがえない。
そのまま無造作に肩から剣を抜き、鞘に収めるA。
邪魔そうに前髪を払ったあと、彼女は真っ直ぐ自分の兄を見つめた。
見つめられた鬼は、ため息をつきながら立ち上がる。
「全く……いきなり蹴り飛ばすなんて酷いことをする」
その表情は道化師のように飄々としていたが……
「お前みたいな悪いこには、きついお仕置きは必要だね」
一瞬にして周囲の空気を氷点下に冷やすような視線に変わった。
ビリビリと圧を感じる。
それも、これまで感じたことのないほどの重圧。
Aの方を見ると、彼女もまた、目を見開いて彼の方を見ている。
その姿は体中が血まみれになっていて、たとえ彼女が鬼の力を発動して回復しているとしても、見るのはとても辛い様子だった。
――このまま、まだ戦うつもりなのか？
そう彼女に問おうとした瞬間、この会場の壁に閃光が走った。
「……は？」
早すぎるその光の動きに、俺もAも呆然とするしかない。
天井の中央についていた巨大なシャンデリアがグラ……と傾き、真っ逆さまに落ちていた。
「……っ」
すぐさまAが大気を操って風を発生させる。
強烈なその風に翻弄されるまま、シャンデリアが粉々に砕けて彼女の兄に襲いかかる……
――が。
「……本当に悪い子だ」
その男はAの目の前にいた。
上から、ものすごい形相でAを見下ろしている。
飛び散ったガラス片はそのまま会場の壁に突き刺さる。
「――は」
信じられない、というように声を漏らすA。
そんな彼女に、男はにいいっと笑った。
(続き)
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作者名：emiria | 作成日時：2021年1月5日 21時
