凪と月肆 (ページ13)

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飛散する噂⑤ ページ13

Aside

目も耳も塞いで、ただひたすらに悔恨に心を費やす……そんな日々が続いてもう一週間が経った。

夕方、日が暮れる一時間ほど前。

もう1日中ずっと眠っているので目が冴えてどうしようもなくなった時のことだった。

「入るぞ」

「！」

ドアが開く音とともに、ずっとそばにいた声が聞こえた。

驚きしかない。

なんで義勇さんがここに？

私は退院するまで、誰にもここに入れてほしくないと頼んだのに……(元々、他の人とは怪我の差が激しくて個室だった)。

「え、な、なん……」

口を閉じたままの義勇さんの後ろから、ひょっこりと蓮くんが顔を出した。

「ごめん、Aさん。でも、このままじゃいけないと思って……」

「……」

蓮くんの申し訳なさそうな顔とその言葉に、私は何も言えなかった。

キュッと布団のカバーの端を握る。

「これを渡したかったんだ」

「え、渡す？」

そういって蓮くんは私にたくさんの手紙を渡してくれた。

「手紙？誰から？」

「あの夜、Aさんが救った人たちからだよ」

うそ……

嬉しさと驚きと……一体何が書かれているのかという不安と。

そんな思いで胸がいっぱいになり、私は手紙をマジマジと見つめる。

「……お前はたくさんの命を救っている。それに気づけていないだけだ」

「義勇さん……」

「早く体調治せよ。周りも待っている」

彼はそれだけ言うと、部屋を出て行ってしまった。

「じゃあ、僕も行こうかな。任務もあるし……それじゃあ、また会おう」

「う、うん……！」

そうして蓮くんも退室。

部屋には私と、蓮くんからもらった手紙。

全部……私宛？

どうやって名前知ったんだろう……と疑問に思いつつ、ゆっくりと、一枚目の封筒をゆっくりと開けた。