凪と月 弐

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あいつだけでも① ページ9

Aside

柱合会議が終わり、柱同士で今後の確認も終えた後。

私は今度蝶屋敷へ向かう日時をしのぶさんと相談しようと、立ち上がった。

その時……

「羽衣紫ィ」

「不死川さん？」

私の隣に腰を下ろしていた不死川さんもいつの間にか立ち上がっており、私の肩を掴んで歩みを止めていた。

「ちょっと話がある」

「あ、はい。でも……」

しのぶさんの方に、チラリと視線をやる。

しのぶさんはにっこり微笑んで、「いいですよ」と目で合図を送ってくれた。

可愛い……

私は不死川さんの顔を見て言った。

「わかりました」

「ここじゃァ言いずれェことだから、外で話そうぜェ」

「はい」

不死川さんが私の先を歩き、私は彼の後ろを付いていく。

柱合会議を行った部屋からでて、少し歩く。

中庭が良く見える廊下に差し掛かった頃、不死川さんが振り返っていった。

「……不死川玄弥」

「え？」

不死川さんの口から出た言葉を聞き、それが何の脈絡のないものだったから、私はつい聞き返してしまった。

「不死川玄弥って奴……特殊部隊にいるって聞いたんだが」

「え、ああ……はい。玄弥君、いますよ」

「そいつのことなんだが……」

奥歯にものが挟まったような顔をして、不死川さんは言った。

「玄弥を、その隊から抜いてほしい」

え、ぬ、抜く……？

「それはなぜですか？」

「……」

気まずそうにそっぽを向く不死川さん。

玄弥君を抜くにしても、それ相応の理由がないとそれはできない。

ただこの隊から抜けて欲しいなんて言っても、玄弥君自身も納得がいかないだろうし……

「あの、不死川さん。せめて理由だけでも教えてください。でないと、判断も出来ません」

不死川さんはチラリと私の方を見て、ため息をついた。

そのため息の中には、「そうだよなァ……」というぼやきが溶け込んでいた。

「玄弥は……あいつは、俺の弟なんだ」