凪と月 弐

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柱合会議④ ページ7

Aside

『西洋の鬼の能力について……Aさんのように、半人半鬼の者のみが使える、ある力が存在するのです』

『しかし、その力の詳細は一切わかっておらず、“X”と呼ばれています』

『その“X”の力を憑依した者は、その日の夜明けとともに砂と化し、死ぬことが定められています』

「……夜明けとともに、か……」

「Aさん？」

柱合会議の後、私はあまね様から聞かされた話に、ただ茫然としていた。

しのぶさんに呼ばれ、意識がハッと戻る。

「……最後の話は、真面目に考えねえとな」

「ああ……目を逸らすことはできない。柱が一人抜ける可能性があるのだから……南無、しかし、どうしたものか……」

不死川さんは腕を組んで、悲鳴嶋さんは数珠をじゃりじゃり鳴らして思案顔だ。

他の人も同様、決して明るい顔はしていない。

そんな中、伊黒さんが私に訊いた。

「……A。お前はいつ、そのXとやらの力を使うかもしれないんだ？」

「え？」

伊黒さんは私に反応にため息をつき、長々と付け加えた。

「力を使うはずのお前がそんな様子では困る。お前はもっと自覚するべきだ。半人半鬼として、柱として、その力を所有する者として。まずはお前の意見がしっかりないと困る。出ないとこの話は先に進めん。……他人が決める話ではないからな。それで、どうなんだ。いつ、使う可能性が出てくるんだ？」

「え、と……私は……」

あまね様の話を聞いた時から、その力を使う可能性のある機会は二つあると、漠然と理解していた。

「力を使う可能性が出てくる戦いは、二つあります」

誰かが息をのむ音が聞こえた。

そりゃあそうだろう。

一度しか使えない力を使うかもしれない機会が、二回あるのだから。

「……詳しく聞かせてくれ」

義勇さんに先を促される。

私は頷き、居住まいを正して話し始めた。

「私はこれまで、西洋の鬼と闘い始めてから、洋館の調査をしてきました。西にある省苑西山寺に向かったのですが……その時偶然会った参拝者の方から、そのお寺の住職さんに関する、ある奇妙な話を聞いたのです」

「奇妙な話ぃ？」

宇随さんが顔を顰めながら、語尾を上げて私の言葉を繰り返した。

私は宇随さんに頷き、話を続ける。

「どうやらその住職さんは、洋館が現れたその日から、昼間は外に出てこなくなったのです。……まるで鬼のように」

(続く)