凪と月 弐

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鬼を殺す者⑩ ページ25

(続き)

「でも……教わったものは、より美しさのある剣術ではなく、ただ鬼を殺すためだけの手段でした。普段見慣れないものを見たが故に、他の隊士たちは義勇さんが言ったような思いを抱いたのではないでしょうか……」

……そいういうことだったのか。

彼女の言っていることもわかるし、隊士たちが言っていることもわかる。

ただ、本当にどっちもどっちで、どうしようもないことである。

俺は、彼女を少しでも疑うような行動に出てしまったことを詫びる。

「すまなかった。こんなことを聞いてしまって」

「いえ、そう思われるのも当然ですよ」

慌てて、掌を俺にむけ、胸の前で振るA。

それでも俺の気落ちが晴れないでいると、彼女は、

「最初からわかっていたことです」

と付け足してくれた。

彼女の疑いは晴れた。

しかしまだ、俺の胸の内のもや(・・)が晴れることはなかった。

「……あの、義勇さん」

「なんだ」

「炭治郎君、外で待たせちゃってますよね……？」

「ああ、そうだったな」

そろそろ中に入れてやらねば。

そう思い立ち上がると、Aが聞いてきた。

「あの……私、炭治郎君に話したいことがあるんです。少しお時間いただいてもいいですか？」

「構わない」

「ありがとうございます」

彼女はふわりと微笑み、外で待っていた炭治郎と彼女の部屋に入っていった。

襖が閉められる。

俺はずっと、その閉められた襖をしばらくの間、眺めていた。