凪と月 弐

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鬼を殺す者⑨ ページ24

(続き)

「お前の鬼の殺し方が少々残酷ではないか、という声が上がっている」

「っ……⁉」

Aの肩がビクンと上がり、目は見開かれる。

正座した膝の上に置かれた手では拳が作られ、それが震えているのも、見えた。

「な、なん……なんで……」

「俺はお前を信じている。だが、俺はお前の責任者だ。だから、確かめているだけだ」

言わない。

言いたくない。

これは、暗に言ったものだ。

ものすごく周りくどい言い方をして、彼女が傷つかないように、聞いたのだ。

『お前、人を喰ってはいないだろうな？』、と。

彼女も、俺が言わんとしていることを察しているのだろう。

その証拠に、眉を、目を、唇を、わなわなと震わせている。

そして、ふるふると小刻みに首を横に振った。

「わ、私は何も……」

「そうか。……それが聞けて安心した」

彼女は嘘をつかない。俺はそう信じている。

そもそも、半人半鬼である自分自身を認めてもらうために鬼殺隊に入った彼女がそのような真似をするはずがない。

「心当たりはあるのか？噂の理由に」

「え、と……それは……」

言いたいことはもう決まっているのだろう、彼女はキュッとその唇をきつく結んだ。

まるで、子供が泣き出す直前のように。

「頼む、聞かせてくれ」

御館様も心配なさっている、とは言わなかった。

もちろん俺もそうだが、彼女もまた、心から御館様を慕っている。

そのことを言うことで、さらに彼女を追い詰めてしまうかもしれなかったからだ。

Aは二、三度、浅く息を吐いた後にこう言った。

「余裕が、ないんです」

余裕がない。

その言葉を思わず復唱しそうになったのをグッと堪え、彼女の続きの言葉に耳を傾けた。

「松川師範の元で鍛錬をしていた時から、そうだったんです。

　＿＿私には義勇さんのような剣才もなく、悲鳴嶼さんのように優れた肉体を持っているわけでもない。

　こんなに小柄だと、筋肉量もそう多くはありません。

　だからせめて、つまらない小細工だけでも、と今私が使っている戦術を教わったんです。」

肩の力がほっと抜ける。

正式な鬼殺隊の師範から教わったことならば、問題はあるまい。

そんなに深刻そうな話ではなくてよかった。

(続く)