凪と月 弐

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鬼を殺す者⑧ ページ23

義勇side

時は少々前後して……＿＿

『月柱様って……聞いた話だが、かなり鬼の倒し方がえげつないらしいな』

あの隊士たちの話を聞いた後、俺は烏からある一通の手紙を受け取った。

その差出人は御館様だった。

その手紙の内容を簡潔に言うなれば、

『最近Aの様子がおかしいから、話を聞いてくれ』

とのことだった。

隊士たちの会話といい、御館様からの手紙といい……不安材料が多すぎる。

これは早急に、直接本人に話を聞かなければならないと思い、強引にAと話をすることにした。

正直、まだ何を話していいのかわからない。

そもそも、この二つのことを彼女に話していいのか、それすらもわからない。

「……そこに座ってくれ」

「はい」

座布団の上に彼女を座らせ、俺は彼女と向かい合うように畳の上にあぐらをかいた。

……長い、沈黙。

この瞬間だけは、空気が鉛のように感じられた。

Aは俺の顔をじっと見、ただ俺が話し出すのを待っていた。

……静かに。

俺は肺を膨らませ、その重たい空気を吸う。

「……最近、というほどでもないが」

「はい」

「体調の方はどうだ」

「特に問題はないですよ」

「先程はだるそうに見えたが……」

「ああ、あれは……日の光に少しやられてしまって」

「……まさか、日光耐性のあの首飾りが効いてないのか？」

俺の疑問に、彼女は首をゆっくりと横に振った。

「あの……」

今度は彼女から話し出した。

「そんなに私、体調悪そうに見えますか？」

「……っ、いや……」

上目遣いに、覗き込むようにして俺の顔を見るAの視線。

それがなぜか、妙に胸を突き刺してくるようだった。

この痛みはなんだ？

「……本当に、私は大丈夫です」

「……ああ」

「義勇さんは頻繁に私の体調の方を確認してきます。そんなに……義勇さんの目には私が弱く見えるんですか？」

不安げに揺れる彼女の瞳。

その瞳の揺らぎに、俺の胸に感じていた痛みはより一層激しさを増す。

「いや、そういうわけでは……」

「っ、じゃ、じゃあ……なんで……」

震える声。罪悪感。

……ああ、そうか。

この痛みは、罪悪感か。

「……一般隊士の間で、お前に関するある噂が流れていてな」

「噂……？」

訝しげに顔を顰めるA。

俺は勇気を出して言った。

(続く)