凪と月 弐

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鬼を殺す者③ ページ18

義勇side

Aのところにも、とうとう柱稽古にやってくる一般隊士が現れ始めた。

屋敷の中にある道場の方から、木刀同士がぶつかる音が絶えず聞こえる。

道場は、柱稽古の話が持ちかけられた時にAに自由に使っていいと言ったので、それはいいが……

廊下を歩き、道場の近くにある厠へ向かうときに、こんな声を聞いてしまった。

「月柱様って……聞いた話だが、かなり鬼の倒し方がえげつないらしいな」

どうやら一般隊士同士が話しているらしかったが、その言葉に俺はつい足をとめ、息を潜める。

「ああ……そうらしいな。俺も聞いたことがある。まるで、どっちが鬼か分からないくらいにな……」

＿＿どっちが鬼か、分からないくらいに。

その言葉に、嫌な想像をしてしまう。

もしかしたら、彼女は鬼の力の制御をできていないかもしれない。

彼女を疑っているわけではないが、責任者は俺だ。

把握しておかないわけにはいかない。

しかし、それが真実なのかすらも今は定かではない。

どうやってそれを知ればいいものやら……

「そこまでか。ああきっと、血も涙もない方なのだろうか」

「柱って大体、そういう人たちの集まりなんじゃないか？」

「まぁ……そうだな」

二人の隊士は、そう話しながら去っていく。

やがて彼らの声は聞こえなくなった。

だが俺の心のうちには、小さなわだかまりというか……不安が、渦巻き始めていた。