鬼を殺す者�� ページ16
Aside
「今日からよろしくお願いします！」
私の前で、たくさんの隊士が頭を下げる。
そ、そんなに行儀良くしなくてもいいのに。
ほとんどの人が、きっと年上だろう……。
「はい、よろしくお願いしますね」
でも、柱たる者、そんな簡単に気の揺らぎを他の者に見せてはいけない。
私はいつもの微笑みを浮かべ、それだけ返した。
私は顔をあげる隊士たちの顔を見ながら、数日前のことを思い出した。
ー数日前ー
柱合会議の日のことだった。
「提案がある……」
「提案、ですか？」
両手を叩き、物凄い音を立てた悲鳴嶋さんが言ったことを、私は思わず聞き返した。
その時、不死川さんの声が、
「お前、ビビンないのかよ……」
という言葉をつぶやいたのが聞こえたのは、黙っておいた。
悲鳴嶋さんの提案は、隊の実力の底上げのため、私たちが直々に一般隊士に稽古をつけるというもの。
刀鍛冶の里で禰豆子ちゃんが日の光を克服した後、鬼の出現が止み、忙しかった柱の時間に余裕ができたからだという。
「私たちはいいんですけど……Aちゃんは……」
蜜璃さんが私の方を見ながら、おずおずと言う。
私は他と違い、西洋の鬼の対応をしてきたことを言おうとしているのだろう。
私は大丈夫です、と首を振ってから答えた。
「最近、西洋の鬼の出現も少なくなっているんです。全く出ないというわけではありませんが……でも、稽古をつけるのに支障をきたすほどの量ではありません」
「南無……そうか。このまま無くなって欲しいものだが……」
「はい。ですので、私も問題なく柱稽古に参加することができます」
＿＿という具合にことが決まり、今日から私のところにも隊士たちが来るようになった。
私の稽古は、伊黒さんの後に行われることになった。
私は主に、『いかなる状況にも臨機応変に戦える力』の育成をすることとなり……
「じゃあ、今から私と一対一で戦います。制限時間は1分。それまで粘るなり私から一本取るなりしてください」
ざわ……とざわめく隊士たち。
その中でもズンズンと私の方に歩み寄ってきた、一人の隊士がいた。
「じゃああなたから。誰か審判をお願い」
「あ、じゃあ僕が」
「ありがとう、それじゃあよろしく」
互いに礼をし、木刀を持つ。
そして二本の木刀がぶつかり合った。
(続く)
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作者名：emiria | 作成日時：2020年8月15日 14時
