初恋 #2 ページ4
「困ってても、普通出来ないことは引き受けないんだよ。好きな人以外は」
「そ、そうなの?!」
「じゃあフィンクスの服が破れてたらどうする?」
「『破れてるからマチに直してもらったら?』って言う……かな?」
「ならェイタンだったら?」
「『破れてるからマチに直してもらったら?』って言う……かな?」
「ほら。それが答えだよ」
言い返す言葉がないのか、悔しそうな顔をしているAが今度は名案が浮かんだ! とばかりにあたしに言葉を投げかける。
「じゃ、じゃあマチは!? マチはクロロさんの服が破れてたらどうするの!?」
「あたし? 『破れてるから縫ってあげるよ』って言うけど」
「なるほど。……うんうん、そうだね。たしかにそれは“好き”だね」
ふふっとニヤつくA。おもちゃを見付けた子供の様に悪戯に笑っている。
「な、何言ってんの!? あたしは別にそんなんじゃ……っ! あたしは直せるから『やってあげるよ』って言うだけで……っ!」
「うんうん、そうだよね。マチはクロロさんのことがね……」
「だから違うって! あ、ちょっと!どこ行くのさ!」
「マチは〜クロロさんのことが〜」
「う、歌うな!!!」
「ふふ、マチ可愛いね」
立ち止まり振り返ると、そう笑いかけてくる。
Aと居ると妹が出来たような気持ちになる。
「いいからこっち来な、縫い方教えてあげるから」
そう言うとあたしの腕に自身の腕を絡みつかせ明るい太陽の様な笑顔で笑うA。
さっさと自分の気持ち認めてシャルとくっつけばいいのに。いちゃついてる二人の姿を見せつけられるあたし達の身になってよね。
喉まで出かかった言葉を勢い良く飲み込む。
AにはAの悲しみや辛さがあるんだろう。そこに無神経に足を踏み入れるべきではない。
Aのことだ。話したくなればきっと自ら話すだろうし、あたしはただこの無邪気で憎めないこの子を見守るだけ。
ホールの隅に二人で座り肩を並べて座る。
どうかAの思いとシャルの思いが結ばれますように、そう思いながら針に糸を通した。
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作者名:咲月 | 作成日時:2020年1月8日 0時