自戒 ページ27
『一緒に寝ないの？』なんてAが可愛い声で俺を誘ってきたけど、自分の欲求だけでAにキスをした後だったから、自分を抑えられる自信が無くてわざと突き放した。
「襲ってもいいならそっちに行くよ。その覚悟があるなら、ね」
こう言えば、Aもきっと分かるはずだ。俺だって男だと。
好きな女の子が隣で寝ているのに、何もしないなんて約束出来るわけがない。
その言葉を聞いてもAは何も言ってこない。うっすら目を開け、横目で見ると、黙って俺を見たまま涙を流すAが目に入り慌てて起き上がる。
「えぇ！？ Aどうしたの！？」
「シャルの声……怖くて……」
「えぇ？ ごめ、そんな怖かった？ ごめん、ごめんね」
そう言い、Aの元へ駆け寄り抱き締める。Aの髪を撫で、壊れた人形のように『ごめん』を繰り返す。
「俺も男だからね、Aが横に居て、何もしないなんて約束出来ないから、だから、ね？」
先程とは違って出来るだけ優しく、諭すように伝える。
「そ、それでもいいから……」
思いがけないAの言葉に一瞬喜んだものの、次の瞬間冷静になる。
「言ったでしょ？ Aが俺を信じれるまで俺は待つって。だからそんな投げやりにならないで」
「でも……っ、離れるの寂し……っ」
「分かった分かった、何もしないから、隣で寝るから、泣かないで……」
自分でもしまった、と思ったけど、こうでも言わないときっとAは泣き止まなかった。現に、俺がそう告げると涙は止まり、大好きな笑顔を見せてくれる。
俺の気も知らないで、けろっと泣き止むとそそくさと布団へ潜りいつもの様にたくさん布団を掛ける。
Aが寝入るまで肘をつき頭を撫でていると、数分で可愛い寝息が聞こえてきた。
Aの本心が聞けて本当に嬉しい。この幸せを噛みしめながら俺は、無防備に眠るAの隣で自分を抑えて寝ないといけないのか……。
早く明日が来る事を切実に願いながら俺も眠りについた。
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作者名：咲月 | 作成日時：2020年1月8日 0時
