私の心は燃えている #2 ページ16
でも。でも、だ。
「だからって、同じ部屋で一泊なんて……そんなの……っ」
付き合ってもない、まして男女なのに同じ部屋で一泊なんて……そう思い声に出すとシャルが意地の悪い声を上げて笑っている。
「あれ? 俺、同じ部屋になんて言ったっけ?」
「な……っ!」
「同じ部屋に泊まりたいの?」
「ちが……っ!」
「俺が腕枕で子守唄歌ってあげようか?」
「だからちが……っ!」
くすくすと笑いながら私を揶揄うシャル。私も私で、なんて勘違いをしてたんだろう。自分が恥ずかしくなる。
「冗談冗談、でも本当、少し休んでから帰ろう? 不安なら別々の部屋……は俺が不安だから部屋は一緒で、ベッド分けるか、俺はソファなり床でなり寝るから。ね?」
声がだんだんと真剣になり、本当に私のことを心配してくれているのだと伝わった。
「分かったよ……ありがとう、シャル」
「とりあえずAはこのままおぶられてて。分かった?」
抵抗など無意味だと分かっているから、黙って頷く。シャルの背中に耳を当て、シャルの心臓が奏でる心音を楽しむ。
あぁ、これが本物の心臓の音か……
「シャル、ありがとう」
私を見つけてくれてありがとう。もうそろそろ、この気持ちときちんと向き合わないといけないのかもしれないな。
そんな事を思いながら、シャルの足は宿泊施設へと向かって行った。
季節はすっかり夏を迎えていて、この暑さは夏の夜だからなのか私の体温なのかシャルの体温なのか、分からないぐらいに身体が火照っていた。
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作者名:咲月 | 作成日時:2020年1月8日 0時