＊文スト＊『彼等の甘い誘惑受けてみませんか？』

＊国木田独歩＊『喧嘩』 ページ10

*





私を抱き締めていた独歩の声は…、身体は、震えていた。無言で彼の背中に手を回し強く抱き締める。





「…頼むｯ…俺と別れないで呉れ…俺の傍から離れないで呉れ…！」




「有難う…私の為の理想だったんだね…ｯ、そんな事も知らず怒って御免…ｯ」




「否、理由も告げなかった俺が悪い…ｯ…済まない……あと、其の…服有難うな…とても似合っている。靴は慣れない靴を俺の為に履いて来て呉れて有難う…だが、あまり慣れない靴を履くな…御前の綺麗な脚が傷付くのは見るに堪えん…」




「っ…ふふ、有難、う…跡、別れる何て厭…、だから…、別れないで下さい…ｯ」



「嗚呼、俺だって別れたくない。…此れからも宜しく頼む」









(…そろそろ帰るね、時間が時間だし…)

(為ら、送ってゆく。脚が痛いだろう？家迄背負って行ってやる)









:end

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