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…おかん、あんな？
久々にその言い文句を聞いたのは、
大毅の卒業式の時でした。
「ん？ なに？」
車椅子には、大毅のデカイ頭を支える、
大きな黒いヘッドサポート。
声変わり失敗したの丸出しやったあの大好きな声も、
もう、ほとんど息の音しかしなくなって。
でも、根は安定の大毅やから、
変わらず、お喋りでした。
旦那が押してた車椅子を止めてくれたのを見て、
私も、彼と同じ目線になり、
優しく暖めてやるように手を握る。
彼に負けないぐらい、ヘラっとした笑顔で。
「おかん、聞いてるよ？ なに？」
すると、聞こえてきたのは、こんな言葉。
…俺、病気治ったら、学校の先生になりたい。
…こんな身体も耳も不自由な俺でも、
先生のおかげで、こうやって高校を卒業できたから。
そんな子たち、俺も助けたい。
それは、大毅が野球以外で初めて教えてくれた、
大きな、大きな夢の話でした。
「…すごいね、ええやん、だいき。」
そんなこと、
私たちが悩む必要なんて全くなかったんです。
大毅は病気と闘いながらも、一生懸命自分を見つめて、
こんなにも大きな夢を持っていたんですから。
「…え？ 大毅がなんて？」
「学校の先生になるんやって！」
「…へぇー、そうなんや。」
「残念やな、淳太くん。笑
お義父さんの会社は淳太くんが継いで終わりやわ。笑」
じゃあ、まずは病気治さんとね？
その返事は、大毅に届くまで3回言い直しました。
届いた時には、また笑って、うん、って頷いて。
大変そう？
でも、そんなの何回だって言いますよ。
それで、大毅が笑ってくれるのなら。
「よし、帰るか。 なんかケーキでも買う？」
「うそ！まじで！ さすが淳太くん！
だいき？ ケーキやって！
めっっっちゃ高いのしてもらおな？笑」
「えーよ。 大丈夫や、金はある。」
「知ってる、私、金目当てで結婚したから。笑」
上で楽しそうに話せば、なんとなくわかるようで、
車椅子から上目遣いで私たちを見渡す、大毅。
こんな時大毅やったらこう言うやろな、
絶対旦那にこう言っておちょくるやろな。
そう考えたり、それを私自身が声にすることで、
大毅も一緒に、
お喋りをしてるような気分になってました。
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のん(プロフ) - この作品大好きです。素敵な作品をありがとうございます。表現素晴らしいです。涙が止まりません。一瞬でファンになりました。 (2020年7月25日 2時) (
レス) id: 56343318d5 (このIDを非表示/違反報告)
ごま - 声出して泣くくらい本当に号泣です。素敵な作品に出会えてよかったです!ありがとうございます。 (2020年5月10日 1時) (レス) id: d07563048d (このIDを非表示/違反報告)
いっちゃん(プロフ) - 初めまして！久々に小説で号泣しました。友人に勧めたくなるくらい素晴らしいお話に出逢いました。ありがとうございました。 (2020年5月6日 17時) (レス) id: a6f24fa91f (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - はじめまして、知り合いに勧められて一気に読みました。途中から涙が止まらなくて、親には心配されました笑多分何回もまた読みに来ると思います、最高の作品でした。作者さんの他の作品も読んでみますね。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年5月5日 9時) (レス) id: f84ebdac68 (このIDを非表示/違反報告)
たぁ(プロフ) - こんにちは。もう一度読みたくなってきちゃいました笑 ほんとにこの作品素晴らしいです>_< 何度涙を流したことか…最高の作品をありがとうございます。 (2020年5月4日 17時) (レス) id: 4b1a527b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉都香 x他1人 | 作成日時：2017年1月4日 18時
