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「あっ、あの子…」
試合が始まってから、気づけばもう5回表。
そこまで、相変わらず望は出ず、
普通に試合を見て、応援していたのですが、
「ん?どうした?」
「あの子見て、足引きずってる、」
ホームベースに盗塁した際、
キャッチャーと変にぶつかってしまったのか、
6番の子が、足を痛めてしまってるのに気がつきました。
「ほんまや、めっちゃ痛そう。」
「今負けてるから、必死やったんやろなぁ、」
実況も、わざわざ、
彼が負傷してしまったことを伝えてくださって。
言うたんなよ、可哀想に。
そう思ってたら、
あっという間にスリーアウトでチェンジ。
甲子園の観客席も、私たちの病室内も、
明らかに不穏な空気が流れていました。
「やばいな、」
「ここ0点で6回に行けたらなぁ、」
ふと大毅を見れば、少し疲れたようで、
目を閉じたり、開いたり。
「だいき、疲れた?
ちょっと酸素落ちてるし寝る? 大丈夫?」
せめて呼吸をしやすいようにと、
胸をさすってやれば、大毅も寝始めるかな、
なんて思ったのですが、
むしろ、その目はよりぱっちりし、
私の方をまっすぐ見つめるように。
まるで、少し諦め気味の私たちに、
諦めんな、と強く言ってくれているようでした。
「ふふっ、大丈夫そうやね?
ごめんごめん、ちゃんと応援するから。
まだ負けたなんて思ってないから。」
その言葉を聞いて会話に入ってきた、旦那。
大毅がなんて?、とか変な色の唇つけて。
もう、せっかく私が大毅とラブラブしてたのにー。
なんて思ってた、その時、
「………っ、見てっ、見て!!」
守備位置はショート、
そこに、なんと望の姿がありました。
「うおぉぉ! きたぁ!!」
「まって! 写メ写メ! 淳太くん写真撮って!!」
2人で大興奮して、病院であること忘れて大声出して。
確か、望がこんなことを言ってました。
自分は、足が速いけど、
体力ないから外野は任せられない。
その代わり、サッカーのキーパーの経験があって、
ボールに食らいつくのは得意やから、
右打者のボールがよく飛んで来る、
ショートを守ってんねん、って。
いきなりのことに、
ただただ驚きました。
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のん(プロフ) - この作品大好きです。素敵な作品をありがとうございます。表現素晴らしいです。涙が止まりません。一瞬でファンになりました。 (2020年7月25日 2時) (レス) id: 56343318d5 (このIDを非表示/違反報告)
ごま - 声出して泣くくらい本当に号泣です。素敵な作品に出会えてよかったです!ありがとうございます。 (2020年5月10日 1時) (レス) id: d07563048d (このIDを非表示/違反報告)
いっちゃん(プロフ) - 初めまして!久々に小説で号泣しました。友人に勧めたくなるくらい素晴らしいお話に出逢いました。ありがとうございました。 (2020年5月6日 17時) (レス) id: a6f24fa91f (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - はじめまして、知り合いに勧められて一気に読みました。途中から涙が止まらなくて、親には心配されました笑多分何回もまた読みに来ると思います、最高の作品でした。作者さんの他の作品も読んでみますね。素敵な作品をありがとうございました。 (2020年5月5日 9時) (レス) id: f84ebdac68 (このIDを非表示/違反報告)
たぁ(プロフ) - こんにちは。もう一度読みたくなってきちゃいました笑 ほんとにこの作品素晴らしいです>_< 何度涙を流したことか…最高の作品をありがとうございます。 (2020年5月4日 17時) (レス) id: 4b1a527b81 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉都香 x他1人 | 作成日時:2017年1月4日 18時