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「…だいきー? あれ、だーいーきー?」
次の障害。
恐れていた早すぎる進行を、私が発見したのは、
大毅が18歳になろうとしてた頃で、
たまたま、病院でも指摘される前でした。
「…ねぇ、だいきー?」
きっかけは、いつもとの違い。
キッチンからの私の声が、
リビングにいる大毅に届いてないなって。
「……だいき、?」
ソファにもたれ、
テレビをボーッとするように眺めていた、大毅。
発症してから3年目、
私もついに、病気に対する慣れがでてきたんですね。
「……はじまっちゃったかぁ、」
びっくりするくらい冷静でした。
「…ねぇねぇ、」
ソファの隣に座り、
その脱力しきった手にツンツンと触れると、
笑いながら、なんやねん、って顔。
この頃になると、あの大毅から出る言葉も、
ポツリポツリと、本当に少なくなってしまって。
毎晩点けてたテレビの音が、
日に日に大きくなっているように聞こえました。
「…耳、聞こえにくいでしょ?」
「………ん、?」
「うわ、とぼけてる。
おかん、ずっとだいきのこと呼んでたんやけど?笑」
「………そ、」
「そ? あぁ、そう?って?笑
ひどー、おかんもう泣いちゃう。笑」
ほっぺを、びーっと引っ張ってやれば、
嫌そうに首を避けて。
まあ、ショックか、と聞かれれば、
素直にショックでした。
それと同時に、進行は、
人によって全然違うんだなと思いました。
心が、ナイフでぐさっと刺されたような気分で。
それは、たぶん、
このことを聞いたから、というのもあったと思います。
「……はい、ご連絡ありがとうございました、
……失礼いたします。」
旦那は仕事、息子2人は学校。
その電話が、昼間にかかってきたのは、
私にとって1番の救いでしたね。
「…………っ、」
その年の6月の終わりに、
飛鳥さんが、亡くなりました。
桜木さんが、ご連絡をくださって。
私は、その場で崩れ落ちました。
で、電話が切れてから一瞬失神。笑
私がこんなだったのに、
桜木さんはやっぱり笑ってらっしゃいました。
発症からは、ちょうど5年の月。
5年生存率0%にちょっとでも貢献できましたかね?って。
電話越しからでも、そのお顔が浮かんでくるくらい。
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な - 昔から大好きなお話なので、もしよろしければ Wordに内容を書き出させて頂いても宜しいですか? どこかに投稿やアップなどは一切致しません。 (2023年4月12日 23時) (レス) id: 144323ef08 (このIDを非表示/違反報告)
mothernature110(プロフ) - 24時間テレビ出てほしいですよね (2017年4月2日 19時) (レス) id: 167eecf0f9 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - すごく感動しました。更新大変だと思いますが、これからもお願いします! (2017年1月4日 17時) (レス) id: 129d5a1fa9 (このIDを非表示/違反報告)
こためるこ(プロフ) - ほんとに号泣です ;_; もう涙止まりません! 更新頑張ってください! (2017年1月3日 2時) (レス) id: faa6f22767 (このIDを非表示/違反報告)
smile06302050(プロフ) - はじめまして!Twitter絡ませていただきます! (2017年1月2日 23時) (レス) id: a1e554584d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉都香 x他1人 | 作成日時:2016年12月27日 20時