【プロセカ】短編集 (ページ9)

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2-3＊神代類＊ページ9

「あの日の出来事が昨日の事のように思えるよ…
知っているかい？ステージから見ると、観てくれている人達の顔が良く見えるんだよ」

「端の席に君がいると気付いた時の、君の上気した頬。きらきらと輝く瞳…僕を見つめてくれるその視線を見た時」

＿あぁ、独り占めしたい。

そう思ったんだ、と先輩は私の空いた手も掴み、両手で引き寄せた。

「A君は、何か決断を鈍らせる悩みでもあるのかな？」

図星だった。何となく目を逸らしてはいけないと思った。でないと心の奥底の、柔らかい所に触れられてしまう。

「そうだね…例えば君が、僕と付き合う事で何かデメリットが生じる、とか」

「……」

「僕ではない誰かに引け目を感じている」

「っ、」

「そうだろう？」

どうしてそんな事が分かってしまうの。彼はこの短期間で私の感情まで把握したというの。私がどれだけの想いでこの気持ちをひた隠しにしてきたと思って…
最悪だ。こんな形で知られたくなかった。

私は神代類に恋をした。ワンダーステージで、初めて彼の、彼の仲間達と作り上げたショーを見たあの日から。

美しいと思った。役者、神代類への一目惚れだったのだ。そして同時に、この想いは隠そうと決めた。神山高校の神代類を知っていたから余計に。

しかし月日が流れ、学校でも彼の姿に目を追うようになって…気付けば自分の欲望が押さえきれなくなっていた。ステージ上での視線だけじゃなくて、普段の姿でもその目を私に向けてほしい。その声で愛を囁いてほしい。その手で私を抱き締めてほしい。

いつの間にかそこまで考えてる事にとても恐ろしくなって、私は彼を諦めることにしたのだ。彼には幼馴染みの寧々がいる。先輩程ではないけれど寧々との付き合いはそれなりに長い。沢山話しているから分かる。彼女との方がお似合いだとずっと思っていたから。

「家、もうすぐそこなんで。ここまででいいです」

「……」

先輩から離れれば自分の想いを昇華できると思っていた。ここ最近気持ちに蓋をしてから、先輩と遭遇しないようにいち早く気付いては逃げていた矢先の出来事がこの告白だった。こんな私に告白なんてしてほしくなかった。

「私が先輩と話すことは無いです。どうぞお帰りください」

「僕は君が好きだ」

「っだから！」

「幼馴染みの寧々じゃない。確かに彼女も大切な人だ。だけど僕の目の届く範囲に、側に来てほしいと思ったのは君だよ」

やっぱり、寧々の話題を出されてしまった。