【プロセカ】短編集 (ページ8)

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2-2＊神代類＊ページ8

「そういえば、君は照れると前髪をいじる癖があるね。目の前で見ることができて嬉しいよ」

もしかして日頃からめちゃめちゃ観察されていた…？いつから？というか癖まで把握されているのは怖すぎる。顔が良いから何をしてもいい訳ではない。ただ、結局そこまで憎めないのだから何だか負けた気がする。罪な先輩だこと。

「君の家はこちらの方向かな？」

「あーその、逆です逆」

「おやおや」

おやおやじゃない。
…それにしても、家まで送ってくれるつもりなのか。
私の家は近い距離では無いが遠くも無いので、話すのには丁度良いのかもしれない。仕方なく会話に付き合うことにした。私から聞きたいこともあったので。

「どうして私なんですか」

「それは交際を前向きに検討してくれると思っても良いのかな？」

「いや、そういう訳では」

「本当は、僕は先程の場所の時点で却下されると踏んでいたよ」

「あれは突然言われたから脳内で処理しきれなかっただけで、」

「A君なら良い返事をしてくれると思っていたよ」

「話を聞け」

思わず敬語が抜けてしまった。いや、本当に話を聞いてくれ。
いつもこの人に振り回されている司先輩に同情した。
…この際はっきり言うしかない。

私が立ち止まると、繋がれた手が少しだけ引っ張られる。止まったことに気付いた先輩も立ち止まり、私の顔を見つめてくる。息を吸って、思いを伝える。

「私、先輩とお付き合いはできません」

「…」

そう言うと彼は眉間にしわを寄せ、顔をしかめた。
そういう顔、するんだ…意外だと思った。

「何故だい？君にとっても悪い話では無いはずだよ」

「悪い話だとしたら、確かにあの時点でお断りしていたと思います。ですが、これが良い話かどうかも私には判断しかねます」

「本当に君はそう思っているのかい」

「は、」

鋭い視線。先程までの、少しだけとろんとした瞳の面影など消え去っていた。なんだか先輩が別人のように思えた。

「君が僕と付き合えない理由が見当たらないね」

「先輩に。先輩に何が分かると言うんですか」

「ずっと見ていたのだから理解できて当然だよ。
君、以前僕たちのステージを観に来てくれた事があっただろう？」

まさか、気付かれていたとは思わなかった。
あの日は休日でそれなりにお客さんも多くて、端の席で静かに観ていたのに。