【プロセカ】短編集 (ページ4)

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1-4＊天馬司＊ページ4

そんな顔…？手のひらで自分の表情を確かめる。そのような行動をしても分かる事など無いのに。

「心配している顔だ。オレにお前の事が分からない訳がないだろう。スターたるもの、目の前にいるカノジョ…を、悲しませるつもりはない」

彼女。本人から改めてそう言われるのは何となくムズムズする。

「分かったならいいよ。…そうだ。今日くらい、私にできることなら何でもワガママ聞いてあげるよ」

「そうか…それなら。オレの事を、昔みたいに名前で呼んではくれないだろうか？」

天馬司の辞書に遠慮という言葉は存在しないのだろうか。ワガママがすぐに出てくるとは思ってもみなかったのだ。それに、結構痛いところを突かれてしまった。

「…え？」

「ずっと気になっていた。いつの間にか、オレだけ苗字で呼ぶようになっていただろう。天馬はオレだけではないのだぞ」

幼馴染み。と言っても、彼とは腐れ縁のようなものだ。咲希ちゃん経由で彼女の兄が私と同い年であることを知り、そこから意気投合して。彼の習い事の日を除けば毎日顔を会わせていたし、咲希ちゃんと三人で話したり遊んだりしていた。思春期を迎えるまでは自分のお転婆な所を見せたし、仕様もない喧嘩だって沢山した。

共学の中学に進学してから、やれ男は声変わりしただの、やれ女は成長期が終わっただの、男女の違いが目に見えて分かるようになる頃には。何となく異性の幼馴染みを名前で呼ぶ事が恥ずかしくなっていた。

天馬司に恋心を自覚してからは余計にそれが自分を苦しめたと思う。彼と想いが通じあってから、もしかしたらまた名前で呼ぶ日が来るのだろうかと考えてはいた。
そのタイミングは今なのではないか。

「…つ、つかさ」

「あぁ。もう一度呼んでくれ」

「司」

「…うむ、とても良い気分だ。すぐに熱が下がりそうだ。A、ついでにもうひとつ良いか？」

「え、あ…はい」

自分が名前を呼ぶことが妙薬になるとはどういう事なのか。大袈裟すぎやしないか。そんな事を思っていると、不意に手首を緩く掴まれた。

「へぁ…？」

「その声は何だ？…時折、熱を出した時の咲希がお前にしてもらった事を羨ましく思っていたのだが。髪を…撫でては、くれないだろうか」